クドリャフカの順番 


 2013.12.23    文化祭的イベント盛りだくさん 【クドリャフカの順番】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

愉しい文化祭のイベント、そのさなかに発生する事件。それを解決しようとする古典部の面々。いつものごとく千反田の好奇心と折木の冷静な判断で事件を解決している。作りすぎた文集を売るため、文化祭の様々なイベントに古典部のメンバーが参加する。前半はイベント参加のゴタゴタで、後半はイベント中に発生する盗難事件解決へとすすんでいく。

盗難事件はかなり難解だ。五十音順にそれぞれの部から物が盗まれていく。が、仕掛けはそれほど単純ではない。クドリャフカの意味が分かっていればより楽しめるだろう。文化祭のイベント的楽しさは伝わってくるのだが、事件の謎については、折木しか解けないようなすさまじく難解な謎だ。

■ストーリー

待望の文化祭が始まった。だが折木奉太郎が所属する古典部で大問題が発生。手違いで文集「氷菓」を作りすぎたのだ。部員が頭を抱えるそのとき、学内では奇妙な連続盗難事件が起きていた。盗まれたものは碁石、タロットカード、水鉄砲―。この事件を解決して古典部の知名度を上げよう!目指すは文集の完売だ!!盛り上がる仲間たちに後押しされて、奉太郎は事件の謎に挑むはめに…。

■感想
古典部シリーズ。今回はとうとう文化祭がスタートし、文集「氷菓」が売り出される。ミスで大量発注した文集を売り切るため、文化祭のあらゆるイベントに参加し、宣伝しようとする古典部。そこで活躍するのは折木ではなく、里志や麻耶花となる。

それぞれの個性に合わせた流れとなっており、里志がクイズに参加し、麻耶花と千反田は料理バトルに参加する。すべては文集を売り切るためだが、このあたり、個性を生かした文化祭のエンジョイ方法が描かれている。折木がひとり蚊帳の外だが、何かしら文集を売り切る仕掛けを考えているのは明らかだ。

物語は、各部から物が盗まれ、そこに”十文字”と名のる怪盗の名前付きカードが置かれることから変化する。五十音順に各部順番に盗まれたと思わしき品々。折木たちの発想は、そこから事件を解決するだけでなく、文集の宣伝にしようとする。文化祭のイベントの楽しさと、さらには法則付きの盗難が発生するというおまけつき。

まず法則の奇妙さと、どうやって誰が何の目的で、という部分が気になるところ。いつもどおり、殺人事件が起きるわけではない、日常のちょっとした謎だが、今回は明らかに犯人が存在するため、いつもの古典部シリーズとは少し雰囲気が異なっている。

事件解決は、冷静沈着で省エネ気質な折木が解決する。千反田は「気になります」とは言うが、事件解決にはあまり貢献していない。その代わり、文集を売り切ることには、これ以上なく貢献している。今回は古典部が力を入れて作った文集「氷菓」をどのようにして売り切るのかがメインだが、連続盗難事件の解決も、全校生徒を巻き込んだ大きなイベントのひとつとなっている。

麻耶花のマンガに対する思いや、折木の強烈な推理力、そして、里志の情報収集能力。すべてが合わさってこそ、解決できた事件だろう。

文化祭の祭り的雰囲気が伝わってくる作品だ。



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