2014.2.17 漫才師のような掛け合い 【ここに死体を捨てないでください!】 HOME
評価:3
東川篤哉おすすめランキング
■ヒトコト感想
鵜飼探偵シリーズ。今回は、いつにも増してお笑いの要素が強い。妹を守るため、見ず知らずの死体を処理した香織たちと鵜飼たちの関係が絶妙だ。特に山荘へ訪れた際の、誤解からの勝手な想像がヒートアップするあたり、強烈な楽しさがある。鵜飼側が考える流れと、香織側が想像する流れの齟齬から、いつの間にかお互いの会話が成立する。
軽快な映画を見ているような気分になる。ただ、ミステリーに関しては微妙だ。釣りに出かけた山荘のオーナーが行方不明となる。そのトリックはかなり大掛かりなものなのだが、警察が捜査すればあっさり気づくのではないかと思えてくる。強烈なインパクトはないが、相変わらずのユーモアが盛りだくさんだ。
■ストーリー
妹の春佳から突然かかってきた電話。それは殺人の告白だった。かわいい妹を守るため、有坂香織は事件の隠蔽を決意。廃品回収業の金髪青年を強引にまき込んで、死体の捨て場所探しを手伝わせることに。さんざんさ迷った末、山奥の水底に車ごと沈めるが、あれ?帰る車がない。二人を待つ運命は?探偵・鵜飼ら烏賊川市の面々が活躍する、超人気シリーズ第五弾。
■感想
妹の家に突然あらわれた見ず知らずの他人の死体を処理するため奔走する香織。巻き添えをくう鉄男。この二人により、まずは死体処理の流れがある。そこではこのシリーズではおなじみとなった面白さがあふれている。コントラバスケースに死体を入れ持ち運ぶドタバタ。
池にそれを捨てるドタバタ。そして、山の中で迷子になるドタバタ。香織と鉄男の漫才師のような掛け合いもまた面白い。そして、作者の作品では定番パターンだが、プロ野球に関する適度なお笑い要素があるのがまた楽しくなる。
鵜飼は依頼人が行方不明の状態を危惧し、山荘へやってくる。そこで、事件が起こり、香織と鉄男の偽装カップルと出会う。鵜飼側と香織側のやりとりが強烈に面白い。香織たちは、鵜飼が自分たちの後をつけてきたと勘違いする。鵜飼は純粋に慰安旅行として旅を楽しむ。
香織たちの勝手な想像により、悪い方へ考えていくネガティブシンキングが面白さを増幅させている。巻き込まれた形の鉄男はいい迷惑だが、物語全体としてシリアスな雰囲気がいっさいない。死体遺棄は立派な犯罪のはずが、なんだか軽いことのように思えてくるから不思議だ。
山荘のオーナーが行方不明となる事件のトリックは大掛かりすぎる。さすがに、そこまで大掛かりなトリックならば、どれほどダメな刑事でもさすがに気づくだろう。そのあたり、ご都合主義的にトリックが不明の流れは続く。今回、鵜飼側はあまり活躍しない。
香織たちがメインであり、香織と鉄男が右往左往する様が面白い。池に沈めたはずの車と死体が、次の日には消えてなくなる。消失系のトリックとしては、うまく山荘オーナーの事件と繋がっているのが良い。
シリーズとして、別キャラがメインとして活躍する珍しい作品だ。
おしらせ
感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp