傷痕 


 2014.10.7      マイケル・ジャクソン追悼小説? 【傷痕】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

明らかにマイケル・ジャクソンをイメージしてると思われるポップスター。そして、その娘が奇妙な木の仮面をかぶった少女で名前を「傷痕」という。この名前の付け方がいかにも作者らしい。傷痕は独自の世界観を持ち、世界的ポップスターを父親にもつことの苦悩を描いている。その他には、ポップスターの姉やその姉の運転手。そしてジャーナリストまで、様々な人物がポップスターと傷痕について語っている。

MJのノンフィクション的展開にしておきながら、虚構を交える。ここにどのような意味があるのか。MJのことをそれほど詳しく知っているわけではないので、どこまでがMJのエピソードを使っているのかわからない。かなり特殊な作品であることは間違いない。

■ストーリー

この国が20世紀に産み落とした偉大なるポップスターがとつぜん死んだ夜、報道が世界中を黒い光のように飛びまわった。彼は51歳で、娘らしき、11歳の子どもが一人残された。彼女がどうやって、誰から生を受けたのか、誰も知らなかった。

凄腕のイエロー・ジャーナリズムさえも、決定的な真実を捕まえることができないままだった。娘の名前は、傷痕。多くの人が彼について語り、その真相に迫ろうとする。偉大すぎるスターの真の姿とは?そして彼が世界に遺したものとは?―。

■感想
マイケル・ジャクソンをイメージしたポップスター。日本版MJなのだろうか。銀座に楽園を作り、少女に対していたずらをしたという疑惑がもたれている。傷痕という特殊な娘から見た父親の姿は、まさにMJを娘から見た姿を作者が想像したものなのだろう。

あえて、MJそのままのエピソードを使い、ジャーナリストからの視点や、姉からの視点で様々なポップスターを描いている。で、結局なんだったのかと言われると、よくわからない。結局のところ、MJの追悼小説といった感じなのだろうか。

傷痕という名前が作者らしさを表している。木の仮面をかぶるあたりも、痛さを表現しているのか。世間の注目をあびる中でも、守秘義務を結んだセキュリティーたちに守られる生活。到底普通ではないが、それこそが偉大なポップスターの娘となった結果だろう。

世間のイメージするMJをそのまま架空のキャラで表現する。結局のところ少女に対するイタズラはなかったという流れとなっている。ジャーナリストの執拗な追求や、告発した少女視点の物語により、ポップスターの潔白性を表現している。

作者はMJのファンなのだろうか。MJが特殊な人生を過ごしたことは間違いない。それをモチーフとした小説を描くというのは、どういった心境からなのだろうか。誰が読んでもMJを元にしているとわかる記述の数々。エピソードをなぞることで、MJの真実を代弁したかったのだろうか。

自分はMJについて、特に思い入れがないので何も感じないが、コアなファンからすると、MJのことを勝手に想像して描いた作者に対して、もしかしたら反感を覚えるかもしれない。

かなりの危険をはらんだ作品であることは間違いない。



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