きみはダイジョウブ? 


 2014.6.16     気軽に話せる年上の先輩 【きみはダイジョウブ?】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

作者のエッセイ集は時事問題を扱う関係上、時期を過ぎると過去の思い出話的に感じてしまう。本作はわりとタイムリーに読めたので、今までとは違った印象になるかと思いきや…。わりと変わらない。過去のエッセイ全体の流れと大きく変化していない。格差社会や、少子化について、作者の主張は一貫している。

ライトな語り口で、たまに辛辣な言葉を吐く。ただ、押しつけがましいのではなく、上司風に説教混じりに語るわけでもない。どちらかと言えば、気軽に話せる年上の軽めな先輩という印象かもしれない。それなりに時事問題に対してしっかりとした意見を持ってはいるが、基本スタンスは緩い。ガチガチの正論を吐かれるよりも、印象は良い。

■ストーリー

東日本大震災、増えない給料、雇用と将来の不安、少子高齢化…いくら世の中が暗くて、人生の先行きが見えなくても、心まで折ってはいけない。優しく、タフに、自分だけの場所を見つけて生きていこう。人気作家が人生の後輩たちに向けて贈る、最新エッセイ集。

■感想
作者のイメージゆえなのか、どれだけ硬い話題であっても、どこか軽く感じてしまう。増えない給料や、非正規雇用の問題などは、作者の小説作品でもおなじみの主張が繰り返されている。ただ、俺の時はこうだっただとか、こうすれば良いという偉そうな説教はない。

今は時代が悪いと語っている。そう言われると、思わず、そうだけど、自分の努力も足りないのでは?なんて思ってしまうから不思議だ。作家として成功した作者が、日々悠々自適に暮らしているかと言えば、そうではない。誰もが努力しているということに気づかされる部分だ。

「R25」に連載された本作。20代の若者が読むのに適している。アベノミクスや株高などを扱い、下手すれば、本作に感化された若者が株に熱中するかもしれない。対して若者以外が読むとなると、特に中年おじさんの頭の中には何も残らない可能性がある。

内容的に薄いわけではない。ただ、作者の意見がどうにも頭の中に入り込まず、当然、心に強く残ることはない。ターゲットとする年代が違うのだから当然かもしれないが、自分が若者の心を忘れてしまったのかと、少し悲しくなってしまう。

人気作家の日常が読めるのも本作の良いところだ。海外で翻訳され、さらには握手会もする。日中間の軋轢などどこ吹く風で、中国でも握手会を実施する。世間の偏向報道や自分が気に入らないことにはズバリと批判している。

有名人が批判すると、それだけで大炎上しそうなAKBに対しても当然批判している。皆わかっていることだが、そのものずばり、かわいくないと言ってしまっている。AKBファンからすると腹立たしいかもしれないが、世間の声を代弁しているのは間違いない。

だんだんと作者のエッセイに慣れてきたというのもあるが、新鮮味がないと感じてしまった。


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