かのこちゃんとマドレーヌ婦人 


 2014.12.10      大人顔負けの人間関係 【かのこちゃんとマドレーヌ婦人】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

小学生の女の子と猫の物語。猫のマドレーヌ夫人が犬と意思疎通ができ、はては人間の意識の中に入り込んだりする。かのこちゃんとマドレーヌ夫人にそこまで濃密な接点はない。ただ、それぞれの生活に、それぞれが影響を与えあい、ちょっとした問題を解決してしまう。出会いと別れを強く印象づける作品だ。

小学生が主役だが、大人顔負けの人間関係にドキリとする。小学生と言っても大人が想像するよりはるかに大人びているのが現実だろう。マドレーヌ夫人とのファンタジーあふれる展開がちょっとホロリとさせる流れに絶妙にマッチしている。年老いた柴犬の玄三郎がすべてのポイントであることは間違いない。

■ストーリー

かのこちゃんは小学1年生の女の子。玄三郎はかのこちゃんの家の年老いた柴犬。マドレーヌ夫人は外国語を話せるアカトラの猫。ゲリラ豪雨が襲ったある日、玄三郎の犬小屋にマドレーヌ夫人が逃げこんできて…。

元気なかのこちゃんの活躍、気高いマドレーヌ夫人の冒険、この世の不思議、うれしい出会い、いつか訪れる別れ。誰もが通り過ぎた日々が、キラキラした輝きとともに蘇り、やがて静かな余韻が心の奥底に染みわたる。

■感想
小学生のかのこちゃんが感じる人間関係というのは、思わずドキリとしてしまう。小学生だからといって侮ってはならない。大人の行動をよく観察し、自分なりに世界観を作り上げている。玄三郎とマドレーヌが夫婦ということに気づき、ふたりの関係を尊重する。

出会いや別れがあったとしても、そこは大人の対応をする。かと思えば子供らしさも見せる。ごく普通の家庭だが、安定した生活を送るかのこちゃんの家族のすばらしさを感じてしまう。特にお父さんの行動や言動には、しびれるものを感じてしまう。

猫のマドレーヌ夫人は謎だ。突然人の意識に入り込み、かのこちゃん家の近所のおばさんとして生活したり。玄三郎と会話をしたり。周りの猫や犬たちから一目置かれる存在のマドレーヌ夫人。かのこちゃんと同じように、猫の世界でも出会いと別れがある。

ただ、そこは悲しみ一辺倒ではなく、新たな希望もある。かのこちゃんとマドレーヌ夫人がそこまでべったりではなく、猫らしい自分勝手な動きをするところがすばらしい。別れの場面であっても、お涙ちょうだい的流れにならないのが良い。

作中でほんのちょっとした記述にドキリとしたり、涙がこぼれそうになる時がある。玄三郎の命があとわずかとわかった時の家族の対応。特に昔からいっしょにいるお父さんの対応は泣けてくる。かのこちゃんは、マドレーヌ夫人に自由を与え、それぞれの道へと進んでいく。

最初は子供向けかと思った本作。実はかなり奥深い。ファンタジーと地に足の着いた家族の在り方が適度にミックスされており、読んでいて心地良くなる。

かのこちゃんの大人びた考え方に、思わずドキリとしてしまう。



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