2014.12.31 老人、世間へ怒る 【人生万歳!】 HOME
評価:3
■ヒトコト感想
ひねくれた親父が、世間に対して怒りをぶつけているように最初は思えた。元天才物理学者が、世間のバカさを嘆きながら日々生活している。老人が過去の栄光にすがり、世間を見下すように悪態をつくのは典型的な老害のパターンだ。本作の男はまさにその典型だが、強がりながら自然と世間の流れにのみ込まれていくのが面白い。
ウッディ・アレンが気難しい元物理学者を演じるのだが、常に怒りながら会話をするのが、いかにも厭な老人風で良い。さらには、馬鹿な若い女の典型として登場する女もすばらしい。天才が凡人と接すると、いつの間にか凡人の考え方も、上っ面だけ天才と同じようになる。人生が終盤に近づいた老人が夢見る展開のような気がしてならない。
■ストーリー
ニューヨークを舞台に、元天才物理学者と田舎町から家出してきた若い娘の、年齢も知能指数もかけ離れた“ありえない”恋愛模様を描くラブコメディ!
■感想
気難しい元天才物理学者のボリス。へ理屈をまくしたて、他人をこき下ろす。妻と離婚した後、自殺未遂を起し足を引きずる怪我をする。宗教は無意味だとか、神はいないだとか、他人の信仰を全否定するようなことを高圧的な口調でまくしたてる。
そして、ボリスは映画を見ている観衆に対して、いかに大衆がバカかをひたすら演説する。ちょっと変わった映画であることは間違いない。ボリスの性格からすると、友達がいない孤独な老人かと思えばそうでもない。ボリスが隣人として存在したら、それだけでかなりのストレスだ。
家出したメロディをひょんなことから家に泊めることになるボリス。典型的な若い女性として描かれてはいるが、世間知らずな部分が強調されているメロディ。メロディとボリスの性格の違いもさることながら、ボリスは自分を天才と言い、メロディがそれを認めているところが面白い。
そもそも会話が成り立っていないが、それすらも二人の個性のように思えてしまう。メロディが、ボリスの言うジョークをいちいち真に受けて心配する場面や、手を洗うのに誕生日の歌を二回歌うなど、特殊なシーンがやけに面白い。
一時的な愛。そして変わっていく愛。メロディの両親がそれぞれ自分に合った愛を見つけていく。そして、メロディもボリス以外の愛を見つけることになる。自由な愛と性を謳歌すべきというメッセージなのだろうか。それとも、哲学的な意味が込められているのだろうか。
常に観衆に語りかけるように会話するボリスのメッセージはどの程度、観衆の心に響くのか。なんとなくだが、若い世代はあまり響かないだろう。人生の終焉が近い人が見ると、何か感じるものがあるのかもしれない。
コメディとしての面白さより、ウッディ・アレンの個性にばかり目が行ってしまう。
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