人類資金1 


 2013.12.7     M資金は存在するのか 【人類資金1】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

詐欺事件の定番として昔から語られていたM資金。M資金が実は存在しており、それを求める男たちの争いが描かれている。冒頭では、終戦直前の混乱期に、M資金と思われる金塊の存在が明らかとなる。そして現代では、M資金を管理する財団の存在がうっすらと明らかになる。

まだ序盤なだけに、登場人物たちは謎につつまれている。政界、財界のフィクサーたちが集う場で怪しくうごめく者たち。架空のM資金を餌に、うかつな経営者たちを食い物にする詐欺師集団。そして、M資金を狙う謎の男。どこまで壮大な話になるのか、今の段階では見えない。それでも、莫大な資金であるM資金が、日本のみならず世界規模で大きな影響を与える物語になることは間違いない。

■ストーリー

終戦の日、日銀の地下金庫から莫大な金塊が姿を消した。戦後の混乱と日本の復興を糧に膨れ上がったその資産の名は『M資金』。七〇年の歳月が流れ、詐欺を生業とする真舟雄一の前に“M”と名乗る男が現れ、あるとてつもない計画を持ちかける。閉塞し混迷を深める世界に革命を促す書下ろしサスペンス超大作。

■感想
終戦の日、莫大な資金がどこかに消えた。M資金は実在するという流れから、それを追い求める男たちの物語。M資金を管理する謎の財団の存在。政界の重鎮や、財界やヤクザの世界まで、日本を裏で動かすような存在すら匂わせてくる。巨大すぎる権力と、それとは別にM資金をネタに詐欺をくり返す男など、登場人物は様々だ。

想像を越える巨大な組織と、それに立ち向かおうとする男の存在はワクワクしてくる。M資金を狙う謎の”M”という男の存在が鍵となるのは間違いないのだが、まだ本作の段階では、その魅力は表現されていない。

本作の段階では、状況説明と登場キャラクターの紹介で終わっている。M資金の行方を知っていると思わしき老人の死。そして、M資金を狙う若い男。経営者たちにM資金詐欺を消しかける男。現段階では、話がどこまで大きくなるのかわからない。

日本だけでなく、タイトルどおり、人類を救うために必要な資金という流れになるのだろうか。M資金をめぐる話だけでなく、日本の経済の状況や、今、現時点で世界の経済はどうなっているのか。そして、将来的に八方ふさがりだということが伝わってくる。

合間に描かれている経済の状況はすべて真実なのだろう。正直、M資金が世界を救うという物語の中では問題ないのかもしれないが、M資金がない現実では、絶望しかないように思えてしまう。世界のGDPよりもアメリカの借金の方が多い現実。雪だるま式に増え続ける日本の借金も、劇的に改善する可能性はない。

借金まみれの世界を救うためには、M資金しかない。物語としては、これ以上ないほどM資金が重要なものとなっているが、その流れが強ければ強いほど、現実には絶望しか残らないような気がした。

今後、キャラクターが出そろうと、衝撃的な展開が待っていることだろう。



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