2014.12.16 すばらしき作者のアンテナの高さ 【憎悪のパレード-池袋ウェストゲートパーク11】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
相変わらず時事問題を扱うパターンだ。本作の良いところは、世間で話題になっていることを取り上げ、その問題をきっかけとしてマコトとGボーイズたちが動き回る。脱法ハーブから始まり、ギャンブル中毒、ITノマド、そしてヘイトスピーチ。話題にはなっても内容をよく知らない事柄を、本作を読むことにより、浅く?理解できるかもしれない。
特にヘイトスピーチ関連は、対向組織や法律的な問題などを細かく知らなくとも、雰囲気は伝わってくる。相変わらずGボーイズは無敵な働きをし、マコトは三十手前にしてフラフラと臨機応変に動き回る。マコトがそんな年齢になったという、この手の作品では珍しく、キャラがリアルに年をとるパターンだ。
■ストーリー
池袋は進化する。あの男たちにまた会える脱法ドラッグ、仮想通貨、ヘイトスピーチ。起こるトラブルは変わってもマコトたちは変わらない。シリーズ第11弾
■感想
「北口スモークタワー」は、脱法ハーブを扱った作品だ。世間で言われているように、脱法ハーブの取り締まりがいたちごっこになることと、脱法ハーブによる悪影響が描かれている。池袋を舞台にした作品だけに、この手の内容は外せないのだろう。
ワンパターンであることは間違いない。脱法ハーブによる被害が大きくなればなるほど、今後リアルな事件も激しいものとなるだろう。本作は、リアルを超えない程度に描かれているため、特別な驚きはないというのが正直な感想だ。
「西池袋ノマドトラップ」は、ノマドワーカーの日常と、それにまつわるトラブルが描かれている。単純にITノマドの実情だけが描かれているとしたら大したことはない。本作では「秒速で〇億円儲ける」系のアフィリエイターの話を付け加えているために複雑化している。
ノマドワーカーが悪いわけではない。ノマドを収入が安定しない非正規雇用的な位置づけにしたため、ネズミ講的な商売に手を出し、トラブルを招くといった感じだ。世間の大多数のノマドワーカーが誤解されそうな流れだ。
「憎悪のパレード」は、表題作でもあり、ヘイトスピーチの内情をよく知らなかったので衝撃を受けた。ヘイトスピーチは法律で裁くことはできない。どれだけ言葉の暴力を浴びせたとしても、逮捕されることはない。読んだ瞬間、なんだか変な気持ちになった。
中国人に対して暴言を吐いて日本から追い出すことに使命感を持つ人々。そして、それを止めさせようとする人々。どちらも、なんだかチグハグした主張のように感じられた。本作が架空の出来事ではなく、現実に起きたことに衝撃を受けずにはいられない。
時事問題に素早く反応する作者のアンテナはすばらしい。
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