一枚のハガキ


 2014.6.23     あふれでる戦争の理不尽さ 【一枚のハガキ】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
100名の兵士たちの命は、クジ引きによって決まる。ある者はフィリピンへ赴任し、ある者は国内に残る。戦争の理不尽さが存分に表現されている作品。戦争に夫を奪われ、半ば強引に義理の弟と結婚させられたかと思うと、その弟も戦争に奪われる。ショックを受けた義理の両親は後を追うように死んでいく。

ひとり残された友子と、運により生き残った者の苦悩が描かれている。戦争未体験の者からすると、あらゆることが理不尽で、納得できない。赤紙が配達された瞬間、なんの拒否権もなく戦争へ向かうしかない。生き残った啓太でさえも、日本に帰ると妻は父親と逃げ出していた。戦争はすべての人を不幸にする

■ストーリー

戦争末期に徴集された100名の中年兵は、上官によるクジ引きによってそれぞれ次の戦地が決められた。宝塚に赴任する松山啓太は、フィリピンへ赴任することになった戦友・定造に妻・友子からの一枚のハガキを託される。

■感想
兵士として戦争に参加し、生き残ることができるかできないか、その境目は何なのだろうか。公平なクジ引きにより次の赴任先が決まる。ある者は激戦地のフィリピンへ、ある者は国内で掃除を続ける。100人中6人だけがクジ引きで国内へとどまることができる状態は強烈だ。

啓太は戦友である定造の生前の願いをかなえるために、友子に会いに行く。なぜ啓太は生き残り定造は死んだのか。友子からすれば理不尽以外の何物でもない。人の命がクジ引きで決められて良いはずがない。こらえきれない怒りが画面から爆発している。

友子の境遇は強烈だ。夫である定造が戦死し、その弟である三平と結婚するも三平も戦死する。義理の両親が死に、ひとりぼっちとなった状態は、戦争の悲惨さを感じずにはいられない。これが戦争なのだと実感せずにはいられない。

戦争を知らない世代には、なぜ戦争に呼ばれて「バンザイ」と叫ばなければならないのかわからないだろう。誰もが戦争なんかに参加したくない。国全体の流れに逆らうことができない恐怖と、怒りのぶつけ先がないことに、さらに怒りが倍増する。

啓太の境遇も悲惨だが、さっぱりとした雰囲気が少し救われている。友子も啓太と出会うことにより、何かしら心に変化が現れる。登場人物は少数だが個性があり、強烈なキャラクーのため、強く印象に残っている。

友子に必要以上に世話をやく男も、下心丸出しでありながら、妙にさっぱりとした面白さがある。啓太と男のやりとりも絶妙だ。悲惨な状況から、束の間の平和となり、そして、現実を理解する。戦争に対する強い怒りの気持ちが、演じる役者を通して伝わってきた。

こじんまりとした作品だが、強烈なインパクトがある。



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