無花果とムーン 


 2014.8.2      奈落はなぜ死んだのか 【無花果とムーン】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

月夜の兄である奈落が、アーモンドアレルギーで死んだ。紫の瞳を持つ月夜が、死んだ兄のことが忘れられず、家族や友達や先輩たちとの関係でゴタゴタと揉める物語。登場人物の名前が月夜、奈落、密、約などと特徴的であり、月夜自身が奈落の幽霊を身近に感じるなど、独特な雰囲気がある。死んだ奈落のことを忘れられず、流れ者の密を死の世界から舞い戻ってきた奈落だと思い込む。

奈落の死の真相が謎のまま物語はすすみ、月夜の悩みと他の者たちから見た月夜の姿が描かれている。今で言うところの「ちょっと痛い子」になりつつある月夜。突然、兄の声が聞こえただとか、兄の幽霊がいると口にすれば、そう思われるのも当然の流れだ。

■ストーリー

「あの日、あの瞬間がすべて。時間よ、止まれ」あたし、月夜は18歳。紫の瞳、狼の歯を持つ「もらわれっ子」。ある日、大好きなお兄ちゃんが目の前で、突然死んでしまった。泣くことも、諦めることもできない。すべてがなんだか、遠い―そんな中、年に一度の「UFOフェスティバル」が。そこにやってきた流れ者の男子・密と約。あたしにはどうしても、密がお兄ちゃんに見えて―。少女のかなしみと妄想が世界を塗り替える。そのとき町に起こった奇跡とは。

■感想
UFOフェスティバルが開催される街。無花果町。紫の瞳を持ち、もらわれっ子である月夜は、大好きな兄の奈落がアーモンドアレルギーにも関わらずアーモンドを口にし、亡くなったことにショックを受ける。なぜ奈落はアーモンドを口にしたのか。

謎を残したまま、月夜は奈落の幻想にとらわれることになる。父親ともう一人の兄は、月夜のことを気にするが、それでも月夜は奈落を忘れることができない。奈落の幽霊を身近に感じる月夜。兄たちは怒り、そして月夜を元の月夜に戻そうとする。月夜の異次元へと飛び出す思考原理はかなり特殊だ。

月夜の周りには、個性的な面子がそろう。奈落の元彼女であるいちご先輩をはじめとして、月夜の行動や考えが誤解されることで軋轢を生んでいる。そして、極めつけは月夜が勝手に奈落の生き返った姿だと思い込む密の存在だ。

キャンピングカーで約と共に日本各地の町で肉体労働しながら旅を続ける男。性格的な軽さはあるが、魅力あふれる男だ。密に惹かれる月夜。奈落の幻想に取りつかれたのか、それとも奈落を忘れるためなのか。月夜の思考を追うことは難しい。

本作の後半では、奈落の死の真相が語られている。驚くべき出来事だが、そこにどんな意味があるのかは語られていない。奈落はなぜそのような行動をとったのか。常にもらわれっ子と自分を卑下する月夜だからこそ、日々、真面目に過ごしてきたはずが、ひとつのことをきっかけとしてタガが外れたように壊れてしまう

月夜にとって、奈落はストッパーだったのだろうか。奈落を失った月夜は、新たなストッパーを自分の中で探し出さなければならない。

月夜の心情を理解するのは難しい。



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