2014.5.18 論文ねつ造はよくあること? 【医学のたまご】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
ひょんなことから、中学生にして医大生となり研究することになった曾根崎薫。医学の研究をし、論文を書いたことになり、学術誌へ発表する。そして、その論文が物議を醸しだすことになる…。かなり前の作品だが、タイムリーなことにSTAP論文の騒動に似ている。メインは薫がいつのまにか研究結果をねつ造したことにされ、困惑するという物語なのだが…。
何より研究機関の仕組みや、論文の仕掛けがよくわかる。供著者として名前が載るのはどのような人物なのか。学術誌にもランクがあり、他の論文にどれだけ引用されるかによって、論文のひいては著者の評価へとつながる。本作を読むと、STAP論文の問題も似たようなものなのか?と思えてしまう。
■ストーリー
僕は曾根崎薫、14歳。歴史はオタクの域に達してるけど、英語は苦手。愛読書はコミック『ドンドコ』。ちょっと要領のいい、ごくフツーの中学生だ。そんな僕が、ひょんなことから「日本一の天才少年」となり、東城大学の医学部で医学の研究をすることに。
でも、中学校にも通わなくっちゃいけないなんて、そりゃないよ…。医学生としての生活は、冷や汗と緊張の連続だ。なのに、しょっぱなからなにやらすごい発見をしてしまった(らしい)。教授は大興奮。研究室は大騒ぎ。しかし、それがすべての始まりだった…。
■感想
本作が、STAP騒動が始まる何年も前に描かれたことを考えると、論文のねつ造問題は昔からあったことなのだろう。実験結果を再現させることを追試といい、その追試ができなければ論文として認められない。偶然一回だけ成功したことを認めるのか、それともエラーが混入したと考えるのか。
本作では、画期的な実験結果のオチとしては、実験上のエラーを原因としている。ということは、今、世間を騒がせているSTAP細胞も、もしかしたら、そもそもエラーだったのでは?と思えてしまう。
本作は、中学生が純粋な気持ちで、医学の研究に対する疑問や、論文に対する不思議を問いかけ、それを誰かが答えている。薫の父親がゲーム理論の研究者であり、様々なアドバイスを薫におくる。このあたり、ミステリアスでありドラマチックな展開となる。
特にラストの記者会見で、薫が論文ねつ造の件で吊るし上げを喰う場面では、どのようにしてこの窮地から脱出するのか、ドキドキしながら読み進めた。研究成果を早く出そうとするあまりの勇み足。本作の根本はそこにあるのだろうが、STAP論文も?と思わずにはいられない。
作者の作品を読み続けている人ならば、登場人物たちに覚えがあるはずだ。高階だったり、佐々木アツシだったり。他のシリーズにメインどろこで登場したキャラが、ちょい役として登場する。同じ世界で時系列が少しだけズレた世界を読むのは、作者の作品を読み続けたご褒美のように、ちょっとした楽しみがある。
中学生が医学の研究をするという、かなり荒唐無稽な作品だが、論文不正のあたりは、何もわからない中学生だからこそストーリーとして成り立つのだろう。
実験結果のねつ造は、現実にありがちなことなのだろう。
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