ハート・ロッカー


 2014.12.21      地味な緊迫感こそ戦争だ 【ハート・ロッカー】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
イラクにおける爆発物処理班の過酷な状況を描いた作品。冒頭から緊迫感あふれる場面が連発する。爆発物処理のすさまじい過酷さが伝わってくる。ひとつ間違えれば、死が待つ世界。どれだけ正確な作業をしたとしても、運が悪ければ死が目の前にある。そんな過酷な任務に、新たに班長として赴任したジェームズが、死を恐れず過酷な任務に挑む。

こう書くとヒーロー的イメージだが、実際の爆弾処理ではルールを守り慎重すぎて悪いことはない。ルールを無視するジェームズにより、死に直面する部下たちの苦しみはすさまじい。カウントダウンされる任務期間。戦争の地味な一面かもしれないが、強烈なインパクトがある。

■ストーリー

2004年夏。イラク・バグダッド郊外。爆発物処理に従事する米陸軍のブラボー中隊に、ジェームズという新たな班長が赴任してくる。この危険極まりない任務を遂行するには、爆弾の解除を実行する班長とサポート役の兵士とのチームワークが必要不可欠だ。しかし、ジェームズはことごとく作業上のルールを無視し、部下のサンボーンとエルドリッジを恐怖と不安のどん底に陥れていく。

■感想
アメリカのイラク進攻について、世間はゲーム的なイメージしかない。空中から目的地へピンポイントに爆撃する。ほぼ無傷で敵を殲滅する最新兵器。実際には兵士たちがイラクの兵士たちだけでなく、過酷なテロとの戦いがあることが描かれている。

戦争ものとなると、激しく銃撃戦を繰り返すのが定番だ。爆発物処理班なんてのは、後方支援扱いで地味なことこの上ないと思っていた。が、実際の過酷さは想像を絶するものだとわかる。一歩間違えれば死が待つ世界。運の要素を多分に含んだ世界で生き残ることの過酷さが描かれている。

爆発物が街中に置かれている。それを処理するのはブラボー中隊だ。いつ爆発するかわからないモノに近づき処理する。遠隔地で操作されていたら、近づいた瞬間爆発する。そうでなくとも、少しの衝撃で爆発してしまう。どれだけ細心の注意を払ったとしても逃れられない死がそこにはある。

すり減る神経。あと何日で任務が解除されるかをひたすら待つ日々。明日生きられるかもわからない状況は、兵士たちの精神をむしばんでいく。そこへやってきたジェームズの無謀な行動は、物語に強烈なインパクトを与えている。

すさまじいリアル感。アメリカ兵がイラクでどれだけ嫌われていたかがわかる作品でもある。死が身近な人間たちはどうなっていくのか。ジェームズの死に急ぐような行動の理由は、最後まで語られない。死ぬために任務についているようにすら思えてくる。

爆発物処理班の過酷さもさることながら、現地のイラク人たちの無残な死にざまも印象深い。特に罪なき市民の体に、鎖で固められた爆弾はすさまじい。人間爆弾と化した男から、どうにか爆弾を取り除こうとするジェームズと迫るタイムリミット。すさまじい緊張感で息がつまりそうになる。

この地味な緊迫感こそリアルな戦争なのだろう。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp