花の鎖 


 2014.12.19      世代間の因縁物語 【花の鎖】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
美雪、沙月、梨花という3人の女性が主人公の本作。中盤までは物語の仕組みがよくわからず、「きんつば」というキーワードが出てくることから、同じ町内での物語かと思う程度だ。それが梨花へ援助を申し出る謎のKの存在から始まり、何か繋がりがあるのでは?と思えてくる。

中盤になると、はっきり構成に気づくことになる。ただ、そこから、すべての謎がぴったりとはまり込むには、それなりに読み込む必要がある。kの正体は?沙月が激しく嫌悪感を覚える理由は?Kと梨花の母親の関係は?それぞれのパートで謎が登場し、別の物語で答えが示される。物語の繋がりを理解することで、謎が解けていくのは快感だ。世代間に続く運命の物語だ。

■ストーリー

両親を亡くし仕事も失った矢先に祖母がガンで入院した梨花。職場結婚したが子供ができず悩む美雪。水彩画の講師をしつつ和菓子屋でバイトする紗月。花の記憶が3人の女性を繋いだ時、見えてくる衝撃の事実。そして彼女たちの人生に影を落とす謎の男「K」の正体とは。

■感想
3人の女性が主人公の本作。読み始めると、同じ町内でそれぞれ違う生活をする者たちという印象がある。このあたり、作者のうまさだろう。梨花がKという謎の人物から援助を申し出られる。梨花の母親とKになんらかの関係があると匂わせておき、Kの正体は別パートに存在するのだと想像できる。

となると、Kとはだれのことなのか。別パートでは巧みにそのあたりをぼやかしている。中盤までは、物語の繋がりすらあいまいなままだ。ただ、共通のアイテムが登場するため、なんらかの繋がりがあることは想像できる。

沙月のパートは、浩一という人物に何かしら因縁があると描かれている。それぞれの登場人物たちの苗字が描かれない。この部分がポイントで、苗字が明らかとなると、親子関係がはっきりしてしまう。本作のポイントは、間違いなくそれぞれの関係性なので、ネタバレしないよう巧みに隠されている。

沙月の母親と浩一の両親に、なんらかの確執がある。その原因は明らかとならない。うっすらとだが、美雪の物語と繋がりがありそうだが、はっきりしない。このモヤモヤ感が本作のポイントだろう。

事の発端と言えるのは、美雪の物語かもしれない。明らかに違う雰囲気と、因縁を感じさせる出来事の数々。本作の仕掛けに気づいたとしても、すべての謎が解明されるのは、物語のラスト間近だ。すべての繋がりがはっきりすると、非常にすっきりとした気持ちになる。

因縁についての繋がりが、途中でリセットされ、謎が別の方向へと向いているのが見事だ。Kの正体も含め、納得できないものはない。作中の登場人物たちと同じタイミングで謎を解明するのは非常に心地良い。

物語全体としては大した謎ではない。構成の妙で面白くしている。



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