ガラス張りの誘拐 


 2014.3.26    瞬間的なドキドキ感 【ガラス張りの誘拐】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

連続婦女誘拐事件が発生し、担当刑事の佐原は奔走する。序盤の事件は序章でしかない。佐原の娘が誘拐され、犯人から細かな指示がでる。誘拐事件の醍醐味は、犯人がどのような計画を立てているかということだ。本作でも、不可解な誘拐事件であり、どう考えても犯人にとって不利な条件ばかりがそろう。

この状況から一発逆転の何かがあるのか?どのようにして逮捕されずに身代金を手に入れるのか?この部分の興味が尽きることはなく、強烈な引きの強さとなる。が、オチが判明してしまうと、かなりがっかりする。結局そうなのか。という思いが強くなる。目の覚めるようなトリックがあるわけではない。瞬間的なドキドキ感を楽しむべき作品だろう。

■ストーリー

「私は断じて愉快犯ではない」―世間を恐怖に陥れている連続婦女誘拐殺人事件。少女惨殺の模様を克明に記した犯行声明が新聞社に届けられた。ところが、家族や捜査陣の混乱をよそに、殺されたはずのその少女は無事戻り、犯人とされた男は自殺、事件は終結したかに思われた。

しかし、事件はまだ終わっていなかった。捜査を担当している佐原刑事の娘が誘拐されたのだ!しかも、犯人は衆人環視のなかで身代金を運べと要求する…。犯人の目的はいったい何なのか?刑事たちを待ち受ける驚天動地の結末とは!?

■感想
周りは警察だらけ、テレビで生中継もされ、透明なビニール袋に無造作に詰め込まれた一億円をどうやって奪うのか。警察に知らせることに問題はなく、声が録音されることを前提に交渉する犯人。いったい犯人にはどのような秘策があるのか。

目の覚めるような鮮やかな身代金強奪シーンがあることを期待したのだが…。事態は意外な方向へと動いていく。確かに、複数の事件により十分準備された流れというのはうなずける。物語に不自然さはない。動機についても理解できるが、どうにも鮮やかな誘拐事件を期待していただけに、オチには驚いた。

誘拐事件について、いくつか考察されるが、それらすべては当然ながら間違っている。ミスリードではないが、愉快犯として存在する動機がないということで排除されている。となると、誘拐の真実味は増してくるのだが、オチが気に入らない。

これほど強烈な引きの強さがありながら、予想外のオチであることは間違いないが、期待外れだ。犯人の動機と手法についての強烈な興味は、オチによって満足させられるものではない。動機については丁寧に語られてはいるが、納得できるものではない。

大きく分けて三つの事件が発生する。佐原が担当した連続婦女誘拐事件。佐原の娘が誘拐された事件。そして、真犯人が経験した事件。どれも単体ではそれなりに引き込まれる魅力がある。なぜ?どのようにして?という疑問はそれなりに解決できるのだが、三つをつなげて、大きな物語とするにはチグハグすぎるような印象だ。

生中継された状況で身代金が鮮やかに奪われる。そんなシーンを想像していただけに、期待が大きいからこそ、落胆も大きい。それだけ、オチに期待していたということだろう。

オチへ到達するまでの奇妙な犯人の要求というのは、強烈に興味を引かれてしまう。



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