2014.2.23 マラソン大会中に思考 【ふたりの距離の概算】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
古典部シリーズ第5弾。今回は古典部に入部希望の新入生が登場したのだが、ある日突然辞めると言い出す。その原因を推理するのが折木なのだが、単純に推理するのではない。20キロのマラソン大会中に、思考をめぐらし答えを導き出す過程がすばらしい。新入生の大日向との出来事を回想し、想像し、結論へとたどりつく。
マラソン大会中にわざとゆっくり走り、関係者に話を聞いて回るというのも普通ではない。ありきたりな学園生活での出来事を、学園生活の中で推理したのであれば面白くない。マラソン大会という非日常で推理するからこそ、面白いのだろう。多少の制約はあるにせよ、省エネ主義の折木にしては意外なほど奮闘している。
■ストーリー
春を迎え高校2年生となった奉太郎たちの“古典部”に新入生・大日向友子が仮入部する。千反田えるたちともすぐに馴染んだ大日向だが、ある日、謎の言葉を残し、入部はしないと告げる。部室での千反田との会話が原因のようだが、奉太郎は納得できない。あいつは他人を傷つけるような性格ではない―。奉太郎は、入部締め切り日に開催されたマラソン大会を走りながら、心変わりの真相を推理する!“古典部”シリーズ第5弾。
■感想
タイトルがマラソン大会中での相手との物理的な距離と心の距離がかかっている。マラソン大会中に過去を思い出し、大日向が部活を辞めると言った原因を探る折木。時系列的に過去から現在へとすすんでいき、大日向と千反田の最後の会話につながる。新入生勧誘の場から推理が始まるのだが、まさに日常の謎が盛りだくさんだ。
製菓部の机の上にガスコンロがあり、カボチャのオブジェがあることに、普通は疑問をもたないだろう。そこは折木と千反田によりなぜ?の合戦が始まる。魅力的な会話であることは間違いなく、そこに引き付けられた大日向の気持ちもよくわかる。
日常の謎なため、インパクトはない。油断すれば見逃してしまうようなことも、謎として解き明かそうとする。千反田の「気になります」という言葉は、どんな些細なことにもあてはまるのだろう。あまりにどうでもよいこともある。
現実で本作と同じように、ささいなことが気になると口走っていたら、かなり変わり者と思われるだろう。このシリーズの特徴のひとつだが、喫茶店の名前が何であるか推理するあたり、日常感がフルにでている。本作に感化され、ついつい同じように日常の謎解きにチャレンジしようとするが、まぁ、無理だろう。
大日向が部活を辞める理由は…。確かに日常の謎であり、人は何がひっかかるのかわからない。マラソン大会中に思考したので、血の巡りがよくなり冴えた推理ができたのだろうか。普通は見逃すようなささいな仕草や言葉を謎の解決へ繋げる。
もし、自分が大日向の立場だったら、ストーカー的なしつこさと細かさに驚いてしまうだろう。謎はさておき、折木の謎の解決に至るまでの細かな思考には驚かされる。自分にあてはめて考えることができるシチュエーションなだけに、驚きはひとしおだ。
省エネ男がマラソン大会を走る(歩く?)こと事態が異例だ。
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