ブロウ


 2014.9.6      浮き沈みの激しい人生 【ブロウ】  HOME

                     
評価:3

■ヒトコト感想
最初は軽い気持ちで始めた薬の売人が、とんとん拍子にうまくいき、気づけばメキシコから薬を運び込み、全米中に売りさばくまでになる。最初の成功で味をしめたというのもあるのだろうが、その後は、何度逮捕さえようとも、同じ過ちを繰り返す。尊敬する父親にやさしく諭されたとしても、一度知った快楽から逃れることはできない。

まじめに働くことができない男は、最後までみじめな人生を送るしかない。良いときは、誰もが羨むようなハーレム生活ができるが、常に警察におびえる生活となる。イケイケのときと、ダメなときの差が激しいのが強烈だ。唯一の味方である父親との会話は、涙を誘う流れだ。ラストはあまりにみじめすぎる。

■ストーリー

70年代アメリカの裏社会が舞台。ジョニー・デップとペネロペ・クルスの競演で贈る、実在する麻薬王ジョージ・ユングの波乱に満ちた半生を描いた衝撃のドラマ。

■感想
どこにでもいる陽気な兄ちゃんが麻薬王になるまではものすごい速さだ。特別なコネがあるわけでもなく、時代と場所と運が良いことで、あっという間に麻薬王となる。最終的には、メキシコの麻薬王であるエスコバルと取引をするまでになる。

仲間と運に恵まれたというのはあるが、アパートの部屋に入りきらないほどの札束の山に囲まれ、この世の天国を味わいながら、どこか心にわだかまりが残る。ユングは母親が苦手ではあるが、父親は尊敬している。尊敬する父親に、麻薬の売人を仕事としていることについての後ろめたさが常に付きまとっているようだ。

何度か警察に逮捕されながらも、しぶとく仕事をつづけていくユング。その際に、両親に会いに行く場面がなんとも悲しくなる。母親はひそかに警察へ通報する。父親は足を洗ってほしいが息子の意志を尊重する。ユングの父親がたまらなくかっこよい。

ユングが幼いころには逞しく頼りがいのある男だったが、事業がうまくいかず、ユングたちに貧乏な生活をさせる。ユングは常に誇り高い父親を尊敬し、父親もユングの意思を尊重する。「幸せなのか?」という父親の問いかけが、妙に物悲しい。

仲間に裏切られ、母親にも裏切られ、最後は終身刑となる。みじめこの上ない人生だが、良い時もある。結婚し、子供が生まれてもなお、まっとうな仕事ができないのはしょうがないのかもしれない。一度、簡単に大金を手にしてしまったら、地道に汗水たらして仕事はできないだろう。最後のチャンスすらも、麻薬密売に手をだす。その結果、刑務所には家族すら面会にこない晩年となる。

特殊メイクでジョニー・デップが晩年のユングを演じているのだが、その姿が悲しすぎる。顔がしわくちゃとなり、ぽってりと出っぱった腹が悲しすぎる。娘の幻覚を見るのが、究極のみじめさを表現しているようだ。

麻薬王の青春は、思い起こせば、みじめな人生ということだ。



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