2014.7.3 ハッスルするオッサンたち 【僕らのワンダフルデイズ】 HOME
評価:3
■ヒトコト感想
50を超えた男たちが、青春を思いだしバンドを再結成する。そのきっかけとして、徹が自分を末期がんと誤解することから始まる。このくだりは竹中直人が演じていることもあり、勘違いというのはすぐに予想できた。様々な状況からより深く誤解し、自分の人生の締めくくりとしてバンドを選ぶ。まったく関係のないことも、自分の末期がんへとつなげて考えるくだりは面白い。
家族が徹のことをうつ病扱いし、あげくは娘の結婚についても、自分のためと早合点する徹は最高だ。仲間たちも、50をこえて熱くなるものを見つけ、それぞれが変化していく。青春を忘れた親父世代が見ると心に響くのだろう。純粋に徹の勘違いが面白い。
■ストーリー
53歳の平凡なサラリーマン藤岡徹は入院先の病院で、末期ガンで余命半年と偶然耳にする。落ち込む日々の中、バンド活動に夢中だった高校時代を思い出した彼は、自分が家族に残せるものは音だと気付き、高校時代のバンド”シーラカンズ”再結成を決意。それぞれに悩みを抱えるようになった旧友たちに新メンバーも加わり、
コンテスト出場を目指し練習を開始する。家庭と仕事、それぞれに事情を抱えた50代のオトコたちが、時にぶつかり合いながらも、熱い心を取り戻していく。果たして新生”シーラカンズ”に、どんな人生の宝物が待ち受けているのかー。
■感想
自分のことを末期がんだと勘違いし、はじける中年。皮肉なことに、バンドメンバーのひとりが実は本当に末期がんだった。単純に勘違いでめでたしめでたしではない。青春を思い出しバンドに燃えた後は、それなりに燃え尽きたりもする。子供や家庭や仕事のことで悩みを抱える50代。
それぞれがそれぞれの悩みを抱え、バンドどころではないはずが、徹の熱い思いに感化され、バンドを再結成する。徹が末期ガンだから、というのは最初のとっかかりだけで、最後には自らすすんでバンド活動に燃える親父たちが熱い。
親父のひとりとして登場する日暮には驚いた。稲垣潤一が普通に演技をしていたので、驚かずにはいられない。ドラムの腕がすばらしいのは当然として、金持ちのボンボンを演じ、何かといえば「親の遺言で」というのが鼻につく。
エリートサラリーマンの山本や赤字不動産屋の栗田や母親がボケ始めた酒屋の渡辺と比べ、あまりに日暮の環境が良すぎるので、そこだけ違和感を通りこして、変な面白さを感じてしまった。親父たちのそれぞれの悩みは切実で深い。が、そんな悩みに落ち込むのではなく、笑って過ごすというのが、なんだか変に共感できてしまった。
徹の末期ガンが実は山本の末期ガンという衝撃もさることながら、その後の右往左往も面白い。単純に青春時代を思い出しバンドを再結成しただけではなく、その中にはいつのまにかそれぞれの悩みを解決してしまうパワーがある。
文字通り人生の終わりや、それに近い状況に陥ったとしても、悲観になることはない。笑って過ごすことはできないが、前向きにはなれる。本作を見て末期ガンの人に勇気を与えたり、50代の親父たちに力を与えるような作品ではない。が、前向きな気持ちになれることは確かだ。
ユーモアと感動が入り混じる作品だ。
おしらせ
感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp