ばらばら死体の夜 


 2014.7.17     ねっとりとした気持ち悪さ 【ばらばら死体の夜】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

破滅へ向かう者たちの物語。古本屋の二階に住む謎の女・沙漠と翻訳家の解のいびつな恋愛物語かと思いきや、後半はダークな物語となっている。資産家の娘と結婚した解。整形をくりかえし、美しくなる代わりに消費者金融を利用し、多重債務者となった沙漠。二人が出会い、金を求める女と体を求める男の関係が物語のベースとなる。

破滅へ向かいつつあるのは明らかだが、どのような破滅を迎えるのか。解と沙漠の関係が解の家族にバレて、どうにかなるのか。それとも沙漠が変化するのか。結局は恋愛物語ではなく、恐怖の物語となっている。登場人物の心境を理解するのは難しい。そのため、しいてあげるなら、多重債務の恐怖という言い方しかできない。

■ストーリー

神保町の古書店「泪亭」二階に住む謎の美女・白井沙漠。学生時代に同じ部屋に下宿していたことから彼女と知り合った翻訳家の解は、訝しく思いながらも何度も身体を重ねる。二人が共通して抱える「借金」という恐怖。破滅へのカウントダウンの中、彼らが辿り着いた場所とは―。「消費者金融」全盛の時代を生きる登場人物四人の視点から、お金に翻弄される人々の姿を緻密に描いたサスペンス。

■感想
古本屋のおやじは、わけありの沙漠を二階に住まわせる。昔古本屋の二階に住んでいた解と沙漠が偶然知り合い、そして関係を深めていく。古本屋のおやじも、沙漠とはちょっとした因縁がある。が、一番の常識人は、間違いなくこの古本屋のおやじだ。

沙漠と解の関係を見て見ぬふりをする。それでいて、少しだけ気に掛ける。人生は何が起こるかわからない。金に苦しんだとしても、充実した人生を送ることはできる。金に不自由しなくても、不幸せな人生はいくらでもある。金にまつわる人生の縮図がここにある。

沙漠と解の関係は奇妙だ。半ば強引に関係をせまられ、いつの間にか解と付き合うことになった沙漠。最終的には解が金を持っていることに気づき、それを奪いとろうとする。沙漠の人生は衝撃的だ。借金をくりかえし、整形する。際限なく整形をくりかえし、ついに闇金にまで手を出してしまう。

沙漠が気づいたときには、借金地獄から抜け出すことができない状態だ。世相を反映しているのか。消費者金融が全盛の時代と、厳しい規制ができ、今度はその消費者金融がボロボロとつぶれだす。沙漠の状況は、ごく当たり前に世間に存在した状況なのだろう。

作中では、借金地獄から抜け出す方法はいくらでもあると語られている。が、大多数の人がそれをしないのはなぜか?無知のためと説明している。まさに沙漠や解は無知のために取り返しのつかない状況へ陥ってしまったのだろう。

多重債務者は過払い金を請求することができる。沙漠の最後の結末は、まさに無知による行き過ぎた行動が招いたことだろう。正直、この手の結末になることは想像できた。濃密な描写の中に、生々しい気持ち悪さが漂うのも、いつもどおりかもしれない。

このねっとりとした雰囲気は気持ち悪い。



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