夜のピクニック


 2011.6.7  気恥ずかしい青春物語 【夜のピクニック】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作の印象そのままに、青春のにおいが強烈にただよってくる。80キロ歩くというイベントとなれば、盛り上がらないわけがない。そんな高揚感が画面からあふれ出し、さらには、あまりの青春臭に、見ているこっちが恥ずかしくなるほどだ。原作では感じなかった気恥ずかしさを強烈に感じ、高校生たちの微妙な心理変化というのがあまり伝わってこなかった。やはり文章で読むのと映像とでは、ダイレクトに伝わってくるぶん、映像の方が何に対してもインパクトが強いのだろう。イベント自体の過酷さと、ちょっとした暴露合戦的な意味合いがある道中など、原作ほどミステリアスな雰囲気がなく、まっとうな青春映画という感じだ。

■ストーリー

全校生徒1000人で、24時間かけて80キロを歩く伝統行事「歩行祭」。今年で最後の歩行祭を迎える貴子は、この特別な日に一度も話した事のないクラスメイト・融に話しかけるという賭けをしていた。そんな簡単なことができない、親友にも言えない秘密が2人にはあった。秘密の賭けを胸に秘め、彼女の最後の歩行祭が始まる…。

■感想
「歩行際」というとんでもない行事のことはおいといて、同級生とひたすら歩くというのは、青春を感じずにはいられない。それぞれが仲の良い人どうしで、ひたすら80キロ歩き続ける。原作では青春の中にミステリの要素が含まれていたが、本作は青春一辺倒だ。絵に描いたような青春をこうもあからさまに見せられると、少し照れてしまう。青春とはこんな感じだったと理解はできるが、それを映像として見せられると、どうにも変な気恥ずかしさがある。

原作で感じられたミステリアスな部分があまり感じられず、ほぼ青春に時間を費やしている。そのため、見終わった印象がずいぶんと違ってくる。「歩行祭」の辛さや、メインの登場人物たち以外の部分に対しても、やはり青春がメインとなっている。一度も話したことのないクラスメイトと話をするという決意を胸に、「歩行祭」にのぞんだ貴子だが、その意思よりもまわりとの青春物語にばかり目がいってしまう。ああ、もう一度高校時代に戻りたいなぁ、なんて気分になるのは間違いないだろう。

誰にも言えない秘密というのが、かなりディープな秘密なのだが、本作を見る限りは、それほど深刻にとらえていない。その真実を知ったらかなり衝撃的なはずだが、どこか悟りを開いたように、運命と諦めているようだ。なんだかんだと青春物語が続くのだが、救いなのは、ありきたりな恋愛へと発展しないところだろう。それは原作でもそうだったが、あくまでも青春と恋愛は別物で、安易に最後にくっつくという結末でなかったのは良い。

わりと原作に忠実だが、感じ方は違うだろう。



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