2012.2.22 エロさが少ない官能小説? 【夜の桃】
評価:3
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■ヒトコト感想
男と女のドロドロの愛憎物語、という雰囲気のはずが作者が描くと、なぜかエロさがない。仕事に成功し、美しい妻と愛人がいる中で、さらに若い女におぼれていく男。妻と愛人と若い愛人の三人と分け隔てなく関係を続けていく男なのだが、物語の半分は女たちとの情事の場面だ。一週間飲まず食わずの男が、急に目の前にご馳走を用意されたように、お互いがお互いの肉体を貪る。むさぼるという表現がぴったりな絡み合いだが、そこに生々しさはない。作者が意図したことかどうかわからないが、本作を読んで興奮するということはなかった。そのぶん、やけに冷静に男女の営みを読み進めることができた。ある意味物語のメインを味わえてないのかもしれない。
■ストーリー
これほどの快楽は、きっとどこか真っ暗な場所に通じている―。成功した仕事、洒落た生活、美しい妻と魅力的な愛人。全ては玩具にすぎなかった。安逸な日々を謳歌していた雅人が出会った少女のような女。いちずに自分を求めてくる彼女の、秘密の過去を知った時、雅人はすでに底知れぬ恋に陥っていた。禁断の関係ゆえに深まる性愛を究極まで描き切った、瑞々しくも濃密な恋愛小説。
■感想
成功者として充実した日々をすごす雅人。美しい妻と仲むつまじく、結婚して何年経とうが夜の生活を続け、魅力的な愛人とは頻繁に関係を持つ。すべてにおいてパーフェクトに思える雅人が、会社にアルバイトとして入ってきた一人の若い女によって、すべてが大きく変化していく。この若い女がわかりやすい魔性の女であれば話が早い。それが、雅人が初めての男であり、体の相性が抜群となると、雅人がはまり込むのもうなずける。ただ、すべてに充実した男がはまり込むにしては、やけに安易に感じたが、それが男と女なのかもしれない。
本作の半分程度は男と女の肉体関係を緻密に描くことにページをさいている。言い方は悪いが、安いAVのように、玄関のドアを開けたらすぐに男のチャックを降ろすなんていう描写もある。そんな定番的な性的描写があるにもかかわらず、あまりエロさを感じないのはなぜだろうか。雅人が中年親父の雰囲気を出していないこともあるのだろうし、そこに現実感がないからだろうか。まるで綺麗なドラマのラブシーンを見ているように、頭の中には入ってくるが、サラリと抜け落ちてしまった。本作の格となる部分であり、重要なはずなのに、あまり心に響かなかった。
お決まりどおり、雅人の女関係は崩壊していく。ただ、その過程では同じ思いを共感した仲間の離婚騒動があり、怪しげなゆすりタカリを行う女の父親の存在だったりと変化はある。単純にすべての女と別れるのではなく、もうひとひねりなにかあるような雰囲気だった。最後に雅人から女が離れていく場面では、女だけでなく会社も金もすべて奪われるのではないか?突然現れた若い女は、実は父親とグルになっており、雅人の金を根こそぎ奪うために雅人に近づいたのでは?なんてことを想像してしまった。
大人な恋愛物語と言えるのかもしれない。性的な描写が濃厚なわりにしつこくなくていいかもしれない。
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