笑うハーレキン  


 2013.5.26     ほのぼのホームレス生活 【笑うハーレキン】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

疫病神にとりつかれ、ホームレスとして生活する東口。前半はホームレスとの共同生活が描かれ、後半は思わぬ事件に巻き込まれ、スリリングな逃走劇となる。東口が家具職人というはポイントかもしれないが、物語として絶対に家具職人でなければ成り立たない話ではない。

疫病神が登場するあたり、なんとなく伊坂幸太郎作品を連想させる流れだが、単純なファンタジーではない。疫病神の正体がポイントで、今までの不幸の連鎖には理由があるという流れだ。東口に突然弟子入り志願の女が登場するが、疫病神の存在と対になるような雰囲気がある。オチとして衝撃的だとかいう感想はない。淡々と物語が最後まで進んでいくという感じだ。

■ストーリー

経営していた会社も家族も失い、川辺の空き地に住みついた家具職人・東口。仲間と肩を寄せ合い、日銭を嫁ぐ生活。そこへ飛び込んでくる、謎の女・奈々恵。川底の哀しい人影。そして、奇妙な修理依頼と、迫りくる危険―!たくらみとエールに満ちた、エンターテインメント長篇。

■感想
疫病神にとりつかれ、ホームレスになる東口。家具会社を経営していたはずが、いつのまにかトラックで寝泊りし、家具を修理して小銭を稼ぐ。その転落人生と不幸の連鎖は読んでいて悲しくなる。特に子供が関係する部分は、心が痛くなる。

本作は、ホームレス活動がメインのため、登場キャラクターは何かしら不幸の雰囲気がある。そんなホームレスたちが共同生活を送るというのは、ほのぼのしてくる。単純にホームレス生活もそれなりに楽しいのでは?なんて思えてくるから不思議だ。

疫病神の正体がひとつのポイントだが、後半では突然事件が発生する。それも人の死が関わる大きな事件だ。このあたり唐突感が強い。のんびりとしたホームレスの生活から一気にスリリングな物語へと展開していく。

物語的にはつながりがあり、しっかりとした理由づけがされているが、それでも前半と後半の差には驚かされてしまう。弟子志願の女にしても、怪しい雰囲気をだしてはいたが、最後の最後まで、結局大きなどんでん返しはなく、ただの弟子志願者として終わっている。

結末間近では疫病神の存在と、その正体が明らかとなる。ミステリーを期待していると、ちょっと期待外れに感じるかもしれない。家具職人についての詳細な描写があり、こだわりは感じられるのだが、家具職人が物語にどうしても必要かが微妙なので、あまり印象に残らない。

ホームレスたちとの共同生活の雰囲気と、心の持ちようによって人生はどうにでもなるという、ちょっと自己啓発的なメッセージを感じてしまった。自分は運がないだとか、不幸だと感じている人は、本作を読んで、考え方を変えられるかもしれない。

ホームレスが主人公のほのぼの物語だ。




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