2012.6.7 出版業界の裏側を暴露? 【歪笑小説】
評価:3
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■ヒトコト感想
出版業界の裏の裏を描いた作品?小説を良く読む人は、必ず楽しめるだろう。おそらく実在の人物をかなり誇張して描いているのだろうが、それにしても面白い。強烈な個性をはなつ名物編集長や、新しい文学賞ができる経緯、小説家という職業が一般人にどのように理解されているのか。超売れっ子作家である作者が書くからこそ、意味があるのだろう。出版業界では、だれそれのことが誇張して書かれていると、話題になったかもしれない。リアルではないのだろうが、事実を一般人でもわかりやすく、それも面白おかしく描いている。作中に登場する、実在の作家をもじった、作家たちを揶揄するようなことも、下手したら抗議がきそうなほど面白い流れになっている。
■ストーリー
新人編集者が目の当たりにした、常識破りのあの手この手を連発する伝説の編集者。自作のドラマ化話に舞い上がり、美人担当者に恋心を抱く、全く売れない若手作家。出版社のゴルフコンペに初参加して大物作家に翻弄されるヒット作症候群の新鋭…俳優、読者、書店、家族を巻き込んで作家の身近は事件がいっぱい。ブラックな笑い満載!小説業界の内幕を描く連続ドラマ。
■感想
小説好きにはたまらない作品かもしれない。華やかに感じる出版業界が、実は裏ではこんな風になっているのだと、フィクションだとわかりながらも、楽しくなってくる。特に最初の「伝説の男」は、かなり誇張されているとしても、面白すぎる。売れっ子作家から連載をとるためにはなんでもする男。スライディング土下座なんてのは、かんたんに姿が想像できるだけに笑いがでてくる。作中に登場する女流作家は、もしかしたらあの作家なのかも?なんてことを想像すると、顔がニヤケてしょうがない。
「小説誌」は、出版業界に衝撃を走らせたのではないだろうか。何も知らない無垢な中学生を質問者とし、月刊小説誌の存在意義を問う。誰もが疑問に思っていることを、その業界で恩恵を受けているはずの作者自身がパロディーとして暴露する。本作を読めば、なぜ?という疑問がさらに強くなることだろう。確かに一部のマニア以外は、月刊の小説誌など読まないだろう。それを作品の中で声高々に叫ぶ作者はすごい。出版業界の仕組みがわかるのは面白いのだが、業界の先行きが不安になってくる。
「文学賞創設」や「ミステリ特集」など、これまた出版業界の裏側を知ることができて面白い。明らかに綾辻行人をもじった作家を登場させたり、推理作家協会に喧嘩を売るような物語だが、それが強烈に面白い。それら裏事情の話は面白いのだが、なんといっても一番は「職業、小説家」だ。これを読むと、小説家志望の人はその夢を諦めるかもしれない。娘が小説家と結婚するという父親の物語なのだが、これが現実なのだろう。作中の小説家はまだ良い方で、大多数の無名な小説家の苦労は、おして知るべしだ。
誇張された現実と、絶妙なパロディが最高に面白い。
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