嘘でもいいから殺人事件  


 2012.7.12   コメディ色が強すぎる 【嘘でもいいから殺人事件】

                      評価:3
■ヒトコト感想
テレビ局の放送クルーたちが孤島の猿島で殺人事件に遭遇する。お決まりどおり、嵐に見舞われ、外部とは連絡がとれない状態となる。隔離された状況で、連続殺人事件が起こる。事件の不可解さよりも、物語全体がコメディタッチなのが気になった。登場人物が個性豊かであり、いかにも何か裏がありそうなキャラクターばかりだ。ディレクターである軽石三太郎であり、あとから登場してくる刑事も特殊すぎる。キャラクターの特殊さと状況により、全体の焦点がぼやけているが、わりと王道なミステリーだ。本作のキャラクターはシリーズ化されているようだが、面白さはあまり感じない。ミステリーでコメディタッチというのは、下手すると、世界観を壊しかねない。本作がギリギリといった感じか。

■ストーリー

テレビ局を舞台に、やらせが過ぎてクビになりかけていたディレクター・軽石三太郎が、進退問われる番組作りにやってきた東京湾・猿島。その島で連続殺人事件に巻き込まれ、滑稽かつ珍奇な騒動に翻弄される数日間を描いた、コメディタッチのミステリー。

■感想
まず番組作りでやらせ全開なディレクター軽石三太郎が特殊すぎる。明らかに実在する番組を揶揄したような話がでてきたかと思うと、信じられないようなヤラセを強要する。この特殊なテレビデレクターの存在自体が、ギャグでしかない。三太郎に翻弄されるADが主役ということで、コメディタッチがさらに強調されている。ミステリーの定番として、地の文は嘘がない、というルールを無視しているのも本作の特徴だろう。それは、早い段階で暴かれるので、トリックの根本には影響がない。ただ、地の文が嘘だとわかった瞬間、物語全体を変な先入観で読んでしまう。

外部との連絡がとれない状態の孤島。そこで巻き起こる事件。限られた容疑者の中で、誰が犯人なのか…。ミステリーとしてはこれ以上ないほどよくあるパターンだ。普通と違うとしたら、それはキャラクターにお笑いの要素が強いということだ。トリックも特別驚くようなことではない。タイトルにある”嘘でもいいから”というのが、面白いフレーズということで、物語の鍵になっている。事件としてのはちゃめちゃ感は、嘘でもいいからということで、なんとなくすべてが許されるような雰囲気が漂っている。

キャラクターに強烈なインパクトがあるので、その他の部分がどうでもよくなっている。不自然なことが起きたとしても、キャラクターのむちゃくちゃな性格と、支離滅裂な言葉によってすべてがうやむやにされている。全体の雰囲気は孤島でのミステリーであることは間違いないが、どこまで真剣なのかを疑わざる得ない。最後の最後までコメディで、キャラクター個人の魅力としても微妙だ。ただ、他の作品に埋もれるようなことは絶対にない。それだけ個性は際立っている。

このシリーズの面白さは、次回作のインパクトにかかっているような気がした。




おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp