トレーニング・デイ


 2011.10.2  定番を裏切る流れが良い 【トレーニング・デイ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
定番の流れを裏切る展開に驚かされる。職権乱用し暴力や横領をくり返すベテラン麻薬捜査官アロンゾ。新人刑事のジェイクは最初は反抗しつつも、最後にはアロンゾに助けられ、アロンゾのすごさを理解する、という流れかと思った。中盤まで、甘いことを言うジェイクをいさめるアロンゾは、まさに風格のある大物刑事だ。それが、終盤になると雲行きが怪しくなり、アロンゾの行動がエスカレートしていく。悪役が最後まで悪役のまま進むとは思わなかった。定番では、この手の悪役の行動は、すべて正義のための小さな悪事という流れのはずだった。アロンゾの圧倒的な存在感と、壮大なカタルシスがまっている。常に正義が勝つとは思わないが、悪はそれなりの報いを受けるものだ。

■ストーリー

念願だったロス市警麻薬捜査課に配属された新人刑事ジェイクにとって、今日は勤務初日。彼のパートナーは数々の大物摘発で伝説となり、憧れの存在でもあるベテラン刑事アロンゾだ。やや緊張の面持ちでアロンゾと待ち合わせたジェイク。だが、のっけから唖然とさせられる。「か弱い子羊でいるか、獰猛な狼になるのか、それを選べ」。そう言うと、アロンゾは押収した麻薬をジェイクに吸わせる。意識を朦朧とさせながらアロンゾの捜査に同行するジェイク。そこで彼が見たものは職権乱用による過剰暴力、脅迫、証拠のでっちあげ、どんなモラルも通用しない犯罪捜査の最前線だった。翻弄するジェイクをよそにアロンゾの行動はエスカレートしていく。そんななか、アロンゾの昔なじみの情報屋から、ロシア人によるアロンゾ報復計画を聞き・・・。

■感想
先輩刑事があまちゃんの新人刑事をしごく的な物語かと思った。アロンゾの極端に悪を強調する演出から、最後には、それらの悪事もすべて理由があるのだと思っていたが、ただの私利私欲のためだったというオチが待っている。アロンゾがジェイクに対してまっとうな正義を説き、巨大な悪を退治する描写があるのか待っていたが、最後までおとずれることはなかった。アロンゾの圧倒的な存在感と、他を威圧する強烈な個性。どんな危険な場所であっても、唯我独尊のその態度。キャラとしてはかなり魅力的なアロンゾだ。

ジェイクが最後まで自分の信念を貫くことが微かな救いだ。どんな状況であっても諦めることを知らず、周りに流されることなく、自分の正義を貫き通す。二時間という時間ほぼすべてが危険な香りや、激しい銃撃戦につつまれている。ジェイクは結局とんでもない場所へきてしまったのは確かで、最初の段階であっさりと脱落していれば、すべて何の問題もない人生を過ごせるはずだった。冒頭、明日の今頃にはすべて結果がでているというあの言葉は、まさしくそのとおりだったのだろう。

セオリーを外れた流れというのは、見ていて不安になるが、それを凌駕する面白さがある。いったいこれから先どうなるのか。アロンゾの行き着く先は。そして、ジェイクはどのような行動をとるのか。職権乱用し、王様であったアロンゾは、自業自得ともいえる結末になる。トレーニングデイというタイトルからは想像できないブラックな物語だが、なぜか惹かれてしまう。悪が圧倒的なまでに悪を貫き通すと、変な魅力がでてくるのだろう。アロンゾのキャラはすばらしすぎる。

想像通りの流れであれば、これほど面白いと感じなかったことだろう。



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