東京タワー  


 2012.1.2  若い男は年上にあこがれる 【東京タワー】

                      評価:3
江國香織おすすめランキング

■ヒトコト感想

大学生の男が年上の女性に恋をする。タイプは違えど、二人の大学生が同じように大人の女性と恋におちる。作中の男たちの異常とも思える相手に対する執着心というのは、どこからくるのだろうか。若いころに年上の女性に憧れるなんてことは、その時期特有の熱病のようなものだ。ただ、本作の男たちの熱の入れようは、特別に感じた。若い彼女がいたとしても、相手の女性に真剣に相手にされなくても、ただ一人の女性がいれば良いなんて心境は理解しがたい。この作品をすでに若者ではない今読んだからこそ冷静に理解しようとするが、リアルタイムに大学生のころ読んでいたとしたら、ありえないと思うか、共感するか、どちらだったのだろうか…。

■ストーリー

大学生の透は恋の極みにいた。年上の詩史と過ごす甘くゆるやかなひと時、世界はみちたりていた。恋はするものじゃなく、おちるものだ。透はそれを、詩史に教わった。一方、透の親友・耕二は、女子大生の恋人がいながらも、蠱惑的な喜美子に夢中だった。彼女との肉体関係に…。夫もいる年上の女性と大学生の少年。東京タワーが見守る街で、二組の対極的な恋人たちが繰り広げる長篇恋愛小説。

■感想
映画化された本作。この雰囲気を映像化して、どこまで魅力が表現できるだろうか。単純に若者が年上の女性に恋をするだけで終わっているのだろうか。どんなに相手のことを強く思ったとしても、夫のある女性に恋をした男の苦悩がにじみでている。ただ、そこには若さがあり、輝くような未来がある。にもかかわらず、男たちは年上の女性から離れられない。この感覚というのが、いまいち理解できなかった。確かに若いころには、年上の女性に憧れたりもしたが、それは一過性のものでしかない。もしかしたら本作の男たちも強烈に密度の濃い一過性の時期を過ごしているだけなのかもしれない。

終始男目線の本作ではあるが、ガツガツとしたありきたりな男たちではない。清潔感ただよい、スマートで対外的には何の問題もないようなフリをする。家もそれなりに裕福で恵まれた生活をする。本作では当然恋愛に焦点が当てられているので、その他の瑣末なことは描かれていない。そのため、大学生特有のガツガツした勢いというのがあまり感じられない。変な落ち着きと、年齢のわりには先を考えていたり、刹那的であったり、年上の女性と付き合う男としての印象そのままだ。

もしかしたら、女性が読むと違った感想を持つのかもしれない。男目線からすると、年上の女性に相手にされないまでも、抑えようのない気持ちが爆発する男という印象が強い。そして、おぼろげながら、その後の展開を勝手に想像し、この時期だけの特別な一瞬だと心の中で思っていた。恋の駆け引きであっても、絶対に相手に勝てない。なにかにつけ、イニシアティブをとりたがる男からすれば、心地良くないのかもしれないが、いつまでも続く関係ではないと心の奥底で感じている。今だけ限定という雰囲気を強く感じてしまった。

若さゆえの過ちなのだろうか。




おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp