扉をたたく人


 2013.4.17     移民の国アメリカだからこそ 【扉をたたく人】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
移民の国アメリカならではの作品だ。身近に移民が存在し、不法入国者があふれかえる環境にいるからこそ、この物語に感じるものがあるのだろう。日本にも、不法入国者は存在するはずだが、身近ではない。無気力な生活を送っていたウォルターが本来接点のあるはずのなに若者と偶然接し、仲よくなるが、その後離れ離れとなる。

ウォルターが、生きがいを見つけ楽しげに生活する場面から、突然おとづれる不幸。どうしようもない現実を受け止め、その後、友を解放するために必死となる。観衆はひそかに、最後にはタレクが解放され、幸せな生活が戻ると期待しているのだが…。なんともやりきれない現実をつきつけられた気分だ。

■ストーリー

愛する妻に先立たれ、全てに心を閉ざし、無気力な毎日を送っている大学教授のウォルター(R・ジェンキンス)。ある日、ニューヨークで移民青年タレクと予期せぬ出会いを果たす。ミュージシャンである彼にジャンベを習い始め、二人の友情が深まっていくなか、突然、タレクが不法滞在を理由に拘束されてしまう。

数日後、ウォルターのアパートの扉をたたく美しい女性。それは、連絡のつかない息子を案じたタレクの母親だった―。ウォルターは彼女と共に、タレク解放に向けた一歩を踏み出すのだった―。

■感想
無気力な生活を送るウォルター。ピアノを習うも、うまくいかず、日々の生活に活力がわかない。ウォルターのNYの家に偶然住みついていたタレクとの出会いから、ウォルターは変わっていく。この無気力な中年男が、生きがいを見つけ生き生きとするシーンというのは見ていて愉しくなる。

最初は粗暴な印象があったタレクも、根は良いやつで、タレクの彼女ともども奇妙な共同生活が始まる。ウォルターがタレクの太鼓に興味をもち、そこから二人で演奏するシーンは、まさに幸せの絶頂のように見えた。

生き生きとする二人の表情を見ていると、このまま終わるはずがないという、得体の知れない恐怖感をおぼえた。タレクが無実の罪で逮捕される瞬間。そして、不法滞在者として逮捕される瞬間、幸せの終わりを感じずにはいられない。そこから、ウォルターの手助けでなんとかタレクを外に出そうとするのだが…。

金を持つウォルターが貧乏なタレクのために弁護士を雇うなど、二人の友情の強さを表現しているのだが、焼け石に水の感は強い。

後半ではタレクの母親が登場し、ウォルターとの関係が気になりだす。物語の結末として、可能かどうかはわからないが、タレクの母親とウォルターが結婚すれば、二人はアメリカの永住権を得ることができるのでは?なんていう、あさはかな結末を予想した。が、物語は無慈悲な現実をつきつけてくる。

移民の国アメリカだからこそ、日常のありふれた光景なのかもしれない。日本人にはあまりなじみがないが、もし、自分と仲の良い人が、突然不法滞在者として強制帰国させられたとしたら…。なんだかやるせない気分になる。

これが現実だと思い知らされる作品だ。


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