地の漂流者たち  


 2013.11.12    70年代の若者たち 【地の漂流者たち】

                      評価:3
■ヒトコト感想
自分が生まれる前のルポルタージュ。自衛隊、アングラ劇場などドロップアウトした若者たちのリアルな現実を描いている。さすがに40年以上前なので、今とは比較できない。それでも当時の若者のパワーや哀愁を強く感じることができ、現在の若者たちに通じる部分もある。現在では、非正規雇用の問題が叫ばれているが、昔は形を変えて同じような問題が存在していたのがわかる。

さらに言うなら、生活レベルは総じて昔の方がかなり低い。今の時代の若者が低賃金を嘆いたとしても、昔よりは良い暮らしができているのは確かだ。時代は変われど、若者が満たされない欲求に不満を叫ぶのは変わらない。自分が生まれる前の若者(父親世代)たちのリアルな生活というのは、非常に興味深い。

■ストーリー

自衛隊、アングラ劇場、ピンク映画、沖縄等の社会にあって、七〇年代を特徴づけるドロップアウトした若者たちの心情を、的確にとらえたみずみずしい未刊行作品集

■感想
アングラ劇場やピンク映画については特別な印象はない。現在にあてはめて考えても、特別印象的な描かれ方をしていない。貧乏劇団員は今でも存在し、ピンク映画の代わりにアダルト動画がネット上に氾濫している。そう考えると、今も昔も若者は変わらないのだろう。

沖縄に住む若者が本土から逃げ帰るというのも、程度の差はあれ、今も同じだろう。頭に思い浮かんだのは、沖縄ではエリートでも本土では普通だ、と言っていた沖縄出身の知り合いの言葉だ。40年前であっても若者たちは同じことを繰り返すのだろう。

自衛隊に関してはかなり衝撃的だ。今の自衛隊員たちがどんな思いで志願したのかわからないが、当時の自衛隊員たちの考え方というのは、今よりも国に対する思いというのが強いような気がした。有川浩の作品を読むと、スタイリッシュで自由な男女恋愛が可能な自衛隊という印象が強い。

かなり情報操作されているとわかるが、憂国について描かれることは決してない。今は流行らない、という言葉だけでは済まされない、時代の流れというのを感じてしまう。戦後まもないということが大きいのだろうか。自衛隊に関するルポはかなり衝撃的だ。

川崎に住む工員たちの話もまたショッキングだ。今の川崎は割とおしゃれな街に様変わりしているが、当時の川崎の状況には驚かずにはいられない。自分の父親世代の若者たちが、辛く苦しい工員生活を続けられず転職を繰り返す。低賃金、寮生活、三交代制。ひどい待遇に嘆き、別のサムシングを求めて転職する。

まさに現代の非正規雇用者の嘆きそのままだ。当時は中高卒者という縛りがあったが、現在の、大卒が大量に存在する中では、大卒者の底辺がそのエリアに入り非正規雇用になったに過ぎない。本作を読むと、格差は今に始まったことではないと思わずにはいられない。

40年も前の若者たちのリアル。衝撃的だ。




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