天使の囀  


 2011.1.12  食物連鎖の頂点への警告 【天使の囀】

                      評価:3
■ヒトコト感想
アマゾンの奥地から帰った者たちが次々と不可解な自殺を遂げる。人格が変化し何かに獲りつかれたようになる。オカルト的な要素を臭わせつつ、科学的な解を示している。正直、想像力が豊かな人は生肉が食べられなくなるだろう。人を異常な心理へと導くモノ。それはおぞましく、食物連鎖の頂点である人間に対して神が警告を与えているようにも感じられる。変にリアルで、もしかしたら現実のアマゾンにも存在するのではないかと思えるほど、物語の鍵となるモノは恐ろしい。人の恐怖をプラスマイナスのスイッチを入れ替えるように快感へと変えてしまう。終末医療に関わる北島が主人公というのも、物語の流れとしてはすばらしい。正体不明であるからこそ、恐ろしいものがある。

■ストーリー

北島早苗は、ホスピスで終末期医療に携わる精神科医。恋人で作家の高梨は、病的な死恐怖症だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、あれほど怖れていた『死』に魅せられたように、自殺してしまう。さらに、調査隊の他のメンバーも、次々と異常な方法で自殺を遂げていることがわかる。アマゾンで、いったい何が起きたのか?高梨が死の直前に残した「天使の囀りが聞こえる」という言葉は、何を意味するのか?前人未到の恐怖が、あなたを襲う。

■感想
人が突然なぞの自殺を遂げる。それも、本人が一番嫌がっていたことでの自殺であり、強烈なインパクトを残す自殺方法だ。物語はアマゾンに存在する一匹のサルから始まる。謎の現象の答えがわからないまま、サブリミナル的に様々なヒントが提示されてくる。異常な自殺方法も恐ろしいが、何よりそこにいたる心理的な状況を考えると、とんでもなく強烈だ。自分が心の底から嫌悪していたことでの自殺。普通の心理ではなく、そうなってしまう強烈な何かのイメージは心に焼き付いてしまう。

物語の中盤。人の異常行動に対する答えが見えてきたころ、ネット上に謎の自己啓発団体が登場する。この謎の団体とアマゾンでの出来事にどのような繋がりがあるのか。そして、自己啓発セミナーの場面と、それに繋がるように連鎖していく自殺。単純な原因のはずが、見えない部分で広がり、謎の団体まで登場してくると、否が応でもとんでもなく大きな組織の影を感じてしまう。物語はそれほど壮大なものになるのか。恐怖の元凶と、伝染病的に広まる原因をどのようにして排除していくのか。恐怖感はジワジワと盛り上がっていく。

「天使の囀」を感じた人は、その後どのようになっていくのか。運よく自殺せずに生き残った者たちの末路はさらに悲惨なものとなる。正直、結末に近づくにつれて、恐怖の元凶に対するイメージがすぐ身近な食物の中に存在するような気がしてくる。ありえないことなのだろうが、霊的な何かよりもよっぽど真実味がある。現実的に、未知のウィルスではないが、本作のような特殊な状況はありえなくもないと思わせるパワーが本作にはある。

使い方によっては麻薬以上のとんでもない代物だと、終始考えながら読んでしまった。




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