短編小説より愛をこめて  


 2012.9.15    礼儀正しい文学 【短編小説より愛をこめて】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

短編小説の名手である作者が、短編小説をどれだけ好きか語る。短編小説の魅力を語りつくし、長編ではなく、なぜ短編が良いのかを、わかりやすい例を示しながら表現している。その結果、作者がおすすめする短編を、かなり読みたくなる。必ずしもベストセラーばかりではなく、マニアックな作品も提示している。ただ、なぜか2章では短編繋がりということで、ギリシャ神話の短編が語られているが、それは「ギリシャ神話を知っていますか」と内容がかぶってしまう。短編という共通点はあるにしても、ギリシャ神話に興味がない人にとっては、もしかしたらわずらわしく感じるかもしれない。ただ、短編を800以上書き続けた作者の言葉には、重みがある。

■ストーリー

読書はすばらしい。何より楽しい。安価で、どこでもいつでも一人で楽しめる。なかでも、読者に時間をとらせず負担をかけない短編は、「礼儀正しい文学である」。著者は作家デビューから30余年、手がけた短編は800編を超える、自他共に認める短編のスペシャリスト。「心中してもいい」とまで言う短編ファンによる、愛のこもったエッセイ集。“私の愛した短編小説20”を収録。

■感想
短編は時間をとらずに読むことができるので良い。通勤時間内に読み終わってしまうような感じだ。今までそれなりに短編を読んできたので、短編の良さはわかっているつもりだ。作者は「礼儀正しい文学」として短編を紹介している。確かに、作者の言うことはもっともかもしれない。短編の良さは、作者が紹介する短編のあらすじを読むだけで、良さを感じることができる。おすすめされれば、ぜひとも読んでみたいと思う。が、短編ということで、サラリと頭の中から抜け落ちてしまう場合もある。自分はまだまだ読み込みが足りないのだろうか。

本作は第2章として、ギリシャ神話にまつわる短編が紹介されている。作者がギリシャ神話好きというのは「ギリシャ神話を知っていますか」でもよくわかる。ただ、本作でそれを紹介されても、同じことを簡略化して紹介されているような気分になる。短編小説の良さをアピールする作品に、なぜギリシャ神話が関わってくるのか。この第2章だけが、かなり全体構成から違和感を感じさせる要因となっている。ギリシャ神話好きならば、問題ないのだが、そうでない人には…、少し辛いかもしれない。

ラストでは、作者のおすすめする短編小説が20編紹介されている。その中に、自分が読んだことのある作品があったので、思わず感動してしまった。それは、重松清の短編だった。内容までは覚えていないが、確実に読んだ覚えのあるタイトルだった。結局、短編として面白いとしても、よほどの個性とインパクトがなければ、短編のタイトルだけ言われて内容がスラスラ思い出せるなんてことはないのだろう。短編を軽く見ているわけではないが、どこか、長編のオマケ的扱いで読んでいた。

作者の言うように、短編の礼儀正しさというのを、もう少し意識しながら短編を読んでいこうと思う。




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