高山殺人行1/2の女  


 2012.10.4    女にふりかかる数々のトラブル 【高山殺人行1/2の女】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

不倫相手のアリバイ工作のために、東京から高山まで車を運転する斉藤マリ。アリバイ工作する側の、なんとも言えない緊迫感がある。道中、カフェの店員に自分の印象を残しつつ、人相までしっかりと覚えられるわけにはいかない状況。基本的にマリの行動を追いかける流れなのだが、マリに次々と降りかかる奇妙な出来事が、物語をミステリアスなものにしている。自分が二重人格になってしまったのかと疑うほど、知らない出来事が周りで起こり始める。ひたすら追いかけてくる銀色のブルゾンを着た男や、得たいの知れないメッセージの数々。必ず、何かしらの仕掛けがあるものと思い、最後まで読み続け、そしてたどり着いた結末は、ある程度想定の範囲内であった。

■ストーリー

愛人の川北留次から「女房を殺してしまった」と電話で告白された斎藤マリ。彼のアリバイを偽装工作するため、被害者に変装して、東京から高山までの道のりを単独でドライヴすることに…。しかし、銀色のブルゾンを着たオートバイ男の尾行や、謎の脅迫状、レストラン店員の不可解な言動など、数々のトラブルがマリを襲う!

■感想
アリバイ工作のために、東京から高山までの道のりを単独でドライブする。不倫相手の妻のふりをし、できるだけ道中で印象を残しつつ、顔を覚えられない程度に目立つ。そんな制約条件下で物語は進んでいく。お決まりどおり、様々なアクシデントがあり、計画どおりにことは進まない。中盤までのアリバイ工作にいたる経緯が、かなり強引のような気がしたが、そこは気にするべきところではないのかもしれない。アリバイ工作をしているはずのマリに不思議な出来事が起こり始める。ここから、急激にミステリアスな展開となる。

マリに降りかかる不思議な出来事。すぐさま思い浮かんだのは、マリが二重人格なのではないかということだ。自分が覚えていないが、周りだけが知る自分の姿。東京から高山に向かう道中で、突然そんなことが起こり始めると、混乱はひとしおだろう。読者は、マリの奇妙な体験に、どんなカラクリがあるかと想像する。二重人格?双子の兄弟?薬による記憶喪失?アリバイ工作のために、不倫相手の妻のふりをしたマリが、奇妙な出来事に遭遇する面白さがある。

結末は、ある程度想定していたとおりだ。しつこく追いかけてくる謎の銀ブルゾンのバイク乗りなんてのは、明らかに怪しい雰囲気をかもし出し続けている。ただ、セオリーとして、何かしら裏がありそうな人物こそ、最後の最後には強力な助けとなる、という予想通りの結末だった。東京から軽井沢そして高山と地理的な部分でよく知っていればより楽しめるだろう。自分の場合、偶然にも最近そのあたりに車で向かったので、作中の情景がそのまま頭の中に思い浮かんできた。

地理的な詳しさがないと、面白さは半減するかもしれない。




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