太平洋の奇跡‐フォックスと呼ばれた男-


 2012.10.10    まるでマンガの世界だ 【太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
太平洋戦争時、47人の兵で45000人のアメリカ軍に対向しつづけた実在人物を描いた作品。ジャングル内に潜み、ゲリラ戦をくり返す大場。日本兵というと、負けが確定した場合であっても、玉砕覚悟で敵陣へ突っ込むというのが定番だと思っていた。本作では民間人を守るため、戦い続けた日本人たちの姿が描かれている。日本側、アメリカ側それぞれの視点では、単純に大場のすごさばかりが表現されている。さらに、頻繁に話し合いの場がもうけられるなど、戦時中とはいえ大場の存在に敬意を払っているというのが伺われる場面だ。日本人としては、どうしても大場に感情移入してしまう。過酷な環境で、民間人を抱えながら必死で戦うその姿は、判官びいきにはたまらないシチュエーションだ。

■ストーリー

民間人を守るために戦った太平洋戦争末期の日本軍兵士たちの姿を描いた、竹野内豊主演の戦争ドラマ。44年、アメリカ軍の前に陥落寸前まで追い込まれた日本軍は、民間人と共にゲリラ戦を決行する。

■感想
サイパンのジャングルで、わずかな兵と共に、アメリカ軍に対向する大場。地形を知りつくした作戦と、どんなに大量の兵を投入したとしても捕まえることのできない存在として、フォックスと呼ばれた男。実在の人物を描いた作品だけに、臨場感がある。サイパン島で日本の指揮官たちが自害したあと、ただ、民間人を守るためにゲリラ戦をくりひろげる。戦争が終わって何十年も経った今だからこそ、ある種ヒーロー的な扱いを受けるが、恐らく現在のアフガニスタンなどでも、同じように、後にヒーローとなりえる存在はいるのだろうか。

大場の指揮官としてのカリスマ性が存分に発揮されている。軍隊を指揮するとなるとイメージは鬼軍曹だ。それが、竹野内豊のソフトな演技で、厳しさの中にとんでもなく大きな優しさを秘めているように感じてしまう。大場の力を認めたアメリカ軍が、どうにかして降伏させようと、あれやこれやと手をつくすが、成功しない。その結果、後半では大場と会談したりもする。戦争中でありながら、こんなことがありえるのだろうかと、この部分だけは、その状況の不自然さに目が釘付けとなった。

戦争が終わったとも知らずにゲリラ戦を続ける大場たち。このあたり、東南アジアのジャングル奥深く、ひっそりと潜んでいれば、信じられるのは自分たちだけとなるのは当然だろう。必死に日本のために戦い続け、敗戦を知ったショックというのは、常人では計り知れない部分だ。本作では降伏するにあたっても、しっかりと実話を元に描かれているようだ。アメリカからすれば、日本兵の、すべてを捧げても国を守るという精神の恐ろしさを感じ、降伏する際の毅然とした態度のシーンでは、これが本作の一番の見どころなのでは?と思ってしまった。

漫画の世界かと思いきや、現実にこんなことがあったというのは驚きだ。



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