2012.11.27 社長になんかなるもんじゃない 【社長のテスト】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
社長とはどういった存在なのか、経営者とは。普通のサラリーマンであれば、「社長は楽な仕事」というイメージだろう。ある程度社会人経験をつんでいたとしても、経営者の心境というのはなかなか理解できるものではない。本作は会社が窮地に追い込まれ、そこで良い条件で会社を経営しないかと依頼されたとき、どうするのかが描かれている。その際に、様々な立場の登場人物たちが、自分の状況を思いあれこれ思案する。社長というのは、なんて孤独で辛い仕事なのだと思わずにはいられない。どんなに事業がうまくいっていようとも、ひとつのアクシデントからすべてが水の泡になり、さらには、自分の人生そのものが崩壊しかねない、そんな崖っぷちの状況に追い込まれる可能性のある職業だということだ。
■ストーリー
明け方に電話で起こされた。会社が火事になったらしい―。PCデータ復旧を営む僕らのベンチャーは、顧客からの預かり品が被害を受け、かなりヤバイ状況に。僕ら社員がクレーム対応に困窮する一方、他人事の社長は逃げ回るばかり。そんな時、最もたちの悪いクレーマーである謎の起業家から、想定外の“テスト”を受ける。密かな企てを試みる僕は、やがて社会を騒がす大事件に巻き込まれていき…。普通のビジネス書が教えてくれない「仕事の裏則・本質」を描き出す新感覚エンターテインメント。
■感想
物語としては、PCデータ復旧会社社員の西村が中心となっている。会社が窮地に陥ると、社長である阿部を頼りなく感じ始める西村。そんな時、藤原という男から社長をやらないかともちかけられる。阿部が駄目な経営者で、藤原が成功した良い経営者という流れとなり、西村がどのようにして成長していくかが描かれるのかと思いきや…。サラリーマンが経営者へとチャレンジするたぐいの物語ではない。甘い話あり、辛い状況あり。経営者とは、人に雇われたサラリーマンが安易に引き受けられるようなものではない。経営者の孤独な厳しさを感じる物語だ。
西村を経営者としてテストした藤原。すばらしい経営手腕と、先を見通す力をもち、事業を成功させてきた藤原。成功したあかつきには、高級なレストランで食事をし、選ばれた者だけが入れる会員制バーへと通う。そんなすばらしき成功者の人生にも、暗部はある。中盤までは西村の目からみた二人の社長は、藤原は成功者で阿部は落伍者のように見えていた。それが、あるひとつの事件をきっかけとして大きくかわることになる。成功者藤原を信じ、先へ進んでいたらどうなったのか。藤原の隠された暗部というのは、この手の流れからすると、非常に意外性がある。
経営者がどれだけ孤独で厳しいプレッシャーの中で仕事をしなければならないのかがよくわかる作品だ。世間では、年商何十億の有名社長が、幸せそうな顔をしてメディアに登場するが、実はその裏ではとんでもなくヘビーな日々を過ごしているのだろうと想像できる。経営者として良い部分だけ見えるのが世間の流れだ。本作のように、サラリーマンが安易に経営者へなろうとすると、とんでもないことになる。藤原と阿部という、どちらも多少なりとも欠点や良い部分のある経営者だが、どちらもその激しい苦労をすべてあきらかにしようとはしない。
平穏な人生を過ごしたいのなら、経営者になど、ならないにこしたことはない。
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