ソウル・キッチン


 2013.2.26     気難しい料理長、最高 【ソウル・キッチン】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
このガチャガチャとした展開は面白い。レストラン”ソウル・キッチン”のオーナーシェフであるジノスが、いろいろと問題があり、ソウルキッチンを奪われるが、最終的にはソウルキッチンを取り戻すというお話。ジノスの身の回りで起こる出来事というのが、不運ではすまされないほど、不幸なことばかりが続く。この出来事の連なりがうまい。不自然さがなく、ちょっとした出来事が次の出来事の伏線となる。恋人が上海へ行くことから始まる不運なのかもしれないが、紆余曲折を経て、ソウルキッチンが大繁盛するあたりはワクワクしてくる。さらには序盤に登場する気難しい料理長がかなり良い味をだしている。トータルすると、本作に登場するキャラの個性により、面白さが保たれている。

■ストーリー

ジノスはレストラン“ソウル・キッチン”の若きオーナーシェフ。恋人が夢を追って上海に行ってしまったり、滞納していた税金の支払いを迫られたり、衛生局に新設備の導入を命じられたり、その上ヘルニアになったりと、このところツイてない。ヘルニアで調理ができなくなったジノスが酒好きな天才シェフを新しく雇うと、彼が作る渾身の料理が評判を呼び店は大盛況!そこへ、刑務所から仮出所してきた兄のイリアスがウェイトレス・ルチアに惚れて、彼女のためにと盗んだDJセットでゴキゲンな音楽も加わって、連日大繁盛!すべては上手く回り始めた、ハズだった。しかし、“ソウル・キッチン”の土地を狙う不動産屋が現れ、店は乗っ取りの危機に陥る。この店はオレたちの心(ソウル)。なくすわけにはいかない!

■感想
キャラクターの個性が秀逸だ。まず主人公であるジノスが、レストランを経営しながら、上海へ旅立った恋人のことが忘れられず苦悩する。ヘルニアを発症させてからは、中腰状態のままソウルキッチンを復活させるために奔走する。やることなすことすべてが裏目にでるジノスの状態と、後半から腰を痛めながらもソウルキッチン復活へかけるジノス。まったくの別人だが、後半の、ジノスを応援したくなる気持ちが、観衆を物語に強く引き込む要素になっている。

ソウルキッチンへ突然査察に入る税務署職員や、客のことをいっさい考えない気難しい料理長。レストランに不法に滞在する老人や、レストランをバンドの練習場代わりに使う若者まで、すべてがやっかいでめんどくさい存在なのだが、それらがぴたりとはまると、ソウルキッチンはとんでもなく繁盛し始める。悪いことが立て続けにおきると、なんて不幸なんだと同情するが、そこから最終回の逆転サヨナラ満塁ホームランのような出来事の数々は、かなり見ていて心が熱くなる。

服役中のどうしようもない兄の存在が、ソウルキッチンを危機に陥れる。上海の恋人や、兄など、身近な者たちに不幸な目に合わされるジノスだが、ジノスが彼らに怒りをあからさまにぶつけるのではなく、前向きに次へ進もうとする姿というのは、とてもすばらしい。物語のトーンは、到底そんな「あきらめない気持ち」や「前向きな思い」というのをアピールする映画ではない。どちらかというと、堕落し、なるようになれというメッセージすら感じてしまう。そんなどうしようもない人々が、偶然の要素が多いとしても、復活する姿は面白い。

コメディ要素の強い、良質な作品だ。



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