シッピング・ニュース


 2011.3.10  原作に興味がわいてくる 【シッピング・ニュース】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
様々な要素が絡み合う作品。いったい何がメインなのかわからない。妻に裏切られた男が、港のニュースに生きがいを求めるのか、それとも幼少期のトラウマを払拭する物語なのか。もしくは、オカルト的な心霊話なのか。クオイル家のルーツに何か大きな意味がありそうだが、はっきりとした説明はない。人々とのふれあいによってクオイルが変わっていくというのはわかるが、それとその他の要素の繋がりがイマイチはっきりしなかった。あちこち目移りした結果、それぞれの印象が散漫になり、結局どんな物語かと説明するのは難しくなっている。感動作ではないし、ホラーでもない。コメディではないし、しいてあげるならヒューマンドラマということだろうか。

■ストーリー

妻に裏切られ、娘と共に父の故郷であるニューファンドランド島へとやってきたクオイルが、人々との触れ合いと愛によって生きる希望を取り戻していくヒューマン・ドラマ。

■感想
ドラマとしての見所に苦労する作品。妻に裏切られた男の物語であることは確かだが、幼少期のトラウマや、娘が感じる心霊現象や、いわくつきのクオイル家についてなど、何がどう関係していくのかがはっきりとは認識できなかった。クオイルがニューファンドランド島で成長していくというのはわかった。新米新聞記者が成長し、その過程で人の温かさに触れていくというのもよくわかる。単純にこれだけならば、何も混乱しなかっただろう。本作はそこに様々な要素が加わることで、いったい何が言いたいのかよくわからなくなっている。

クオイルが港の新聞記者となり、記者のイロハを学びながら成長していく様は見ていて心地良い。新たな出会いもあり、再出発としてはこれ以上ないほど順調にきていた。そのとき、クオイル家の過去を知ったクオイルの心には大きな変化がおとずれる。複数の要素が絡み合い、単純にクオイルの成長物語とすればいいものを、小難しくしているような気がした。ミステリアスホラー的な要素として、娘がクオイル家の因縁に対する何かを感じるようなそぶりがあり、叔母は過去の出来事について口を閉ざす。このあたり、クオイルの再出発とどのような関係があるのかよくわからなかった。

作中には整合性はないが、痛快でかなり文学的な印象を受ける箇所がある。恐らく原作は長大な物語で、それを無理矢理映画としてまとめ上げたため、こうなったのだろう。先祖代々漁で命を落としてきた家系の男が、自分が死にかけから生還すると、呪いが解けたと騒ぐ部分や、夫の浮気のすえ、母子家庭となった母親の周りに対するいい訳など、細かな要素が多すぎる。心に闇を抱えた人々といえるのかもしれないが、それらが本作のラストですべて救われたかというと、そうではない。個々のエピソードは面白いだけに、なんだかもったいないように感じられた。

原作を読んでいたらまた違った印象を受けたかもしれない。



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