青年のための読書クラブ  


 2011.11.19  女学園の異端なクラブ 【青年のための読書クラブ】

                      評価:3
桜庭一樹おすすめランキング

■ヒトコト感想

聖マリアナ学園の異端児ばかりが集まる「読書クラブ」。秘密のクラブ誌に描かれた出来事が、連作短編の形ですすんでいく。少女だけの特殊な学園で、ポイントとなるのは女の中で王子を決めるという儀式だ。聖マリアナ学園の特殊さと、読書クラブの異端さを描きつつも、女学園独特のドロドロした生臭さはない。異端の中にもまっすぐ芯の通った考え方と、男のようにサバサバとした考え方。異端者が集まる上での卑屈さや屈折した怒りはなく、様々な出来事をただ受け入れるだけの読書クラブの面々。学園の成り立ちから終焉までを、ヘンテコなエピソードも含めて描き、王子という女学園のヒーローとなることへのこだわりなど、男には理解できない特殊な世界がそこにはある。

■ストーリー

伝統あるお嬢様学校「聖マリアナ学園」。転入生・烏丸紅子は中性的な美貌で一躍、学園のスターとなる。その裏には異端児たちの巣窟「読書クラブ」の部長で、容姿へのコンプレックスを抱えたニヒリスト妹尾アザミの、ロマンティックな詭計があった…。学園の創設から消滅までの百年間に起きた数々の事件の背後で活躍した歴代の「読書クラブ」員。その、あらぶる乙女魂のクロニクル。

■感想
冒頭、「烏丸紅子恋愛事件」で聖マリアナ学園と王子を決める儀式の説明がなされている。異端者たちが協力し、読書クラブから史上初の王子を生みだそうと画策する。読書クラブという、ただ読書するだけのクラブの存在意義や、学園の奇妙さを深く考えてはいけない。高い知能をもつが容姿に恵まれない読書クラブ部長によって計画された、王子化計画を楽しむべきだろう。ヘンテコな風習や、少女たちの不安定な心境と、紅子の強烈な個性。キャラクターの面白さと、舞台の不思議さが物語の面白さを引き立てている。

「聖マリアナ消失事件」は、まさにこれぞミステリーといった感じで、思わずうなってしまう。学園の創設者であるマリアナが突然消える。そこにはマリアナの兄が関わっているのだが…。オチ的にそうなるとは思わなかった。時代はさかのぼり、学園が創立される前のマリアナが描かれ、そこからどのようにして学園が作られたかが描かれている。マリアナの疾走と兄がどう関係しているのか。読者の疑問をしっかりと解き明かし、なおかつラストには衝撃の事実が隠されている。そんなバカなと思うだろうが、驚いてしまう。

その他の短編は、すべて学園内で巻き起こる王子をめぐる騒動や、生徒会と読書クラブのいざこざが描かれている。それぞれの短編では何かしら古典作品から引用されている。知らない古典ばかりなので、その繋がりはわからないが、そんなことはほとんど関係ない。学園で読書クラブが巻き起こす騒動を、時系列に追っていくと、最後の短編では、まさに自分が読書クラブの一員になったような気分になる。少しばかり感傷的になり、過去を懐かしむ読書クラブメンバーたち。ありえない展開だが、それぞれの時代に、実際に起こった事件や出来事が描かれていると、時代の変遷をいやでも意識してしまう。

ノスタルジックな雰囲気も持ち合わせた作品だ。




おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp