2011.6.9 オーソドックスすぎるミステリ 【殺人方程式(切断された死体の問題)】
評価:3
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■ヒトコト感想
オーソドックスなミステリ。王道と言うべき作品だろう。刑事が捜査し不可解な事件を解決する。一卵双生児である刑事の双子の兄が、勝手に捜査をすすめてしまうという部分が、差別化されている程度だ。物語の肝は間違いなく不可能殺人のトリックだろう。ミステリの作法にのっとって、謎を小出しにし、意外な人物が犯人となる。まさに文句のつけようがない王道ミステリだ。ただ、それだけに、別の要素を求めたりすると、厳しいかもしれない。オーソドックスすぎるため、物足りなさがある。作者の作品としては、最後に大きな驚きを期待してしまうが、本作はそうではなかった。トリックも悪くはないが、特別な印象はない。この手の王道ミステリは、どうしてもハードルが高くなってしまう。
■ストーリー
新興宗教団体の教主が殺された。儀式のために篭もっていた神殿から姿を消し、頭部と左腕を切断された死体となって発見されたのだ。厳重な監視の目をかいくぐり、いかにして不可能犯罪は行われたのか。二ヵ月前、前教主が遂げた奇怪な死との関連は?
■感想
不可能な殺人事件が発生し、それを捜査する刑事。なんだかんだとありながら、最後には犯人をつきとめる。大きな仕掛けや、読者を騙す何かがあるわけではない。最初から最後までしっかりとした王道ミステリだ。トリックについても、「そんなバカな」とあきれるようなものではなく、しっかりと答えが示されている。ただ、そこに大きな驚きはない。誰もが考えつかないような、あっと驚く仕掛けを期待してしまうのは、作者の今までの作品を読んだ読者ならばしょうがないことだろう。悪くはないが、期待以上のものではなかった。
オーソドックスなだけに、そこに登場するキャラクタの個性に目がいってしまう。本作では刑事の双子の兄が名探偵役をかってでるのだが、特別な個性を感じなかった。ちょっと偏屈なキャラということと、刑事のフリをするということが特徴のようだが、それだけでは弱い。事件がメインなのか、キャラクタがメインなのか、どっちつかづの状態のように感じた。ミステリとしての事件には、それなりにのめり込むことができる。どうやって事件を引き起こしたのか、想像力を働かせ考えてしまう。ただ、オチもその想像の範囲内でしかない。
作者のマニアックなファンは、もしかしたら物足りなく感じるかもしれない。逆に、作者の作品をほとんど読んだことがない、ミステリ初心者にはちょうど良い作品かもしれない。トリックが小難しいとか、理屈っぽいと感じるかもしれないが、こんなのはまだ良い方だ。マニアックな作者のファンには、軽すぎると感じるだろう。館シリーズとまではいかないが、その手の最後にあっと驚かせてくれるような、大どんでん返しをどうしても期待してしまう。そう期待されるのは、作者の作品の性なのかもしれない。
王道とも言うべきミステリなので、安心して読める。
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