ロシア幽霊軍艦事件  


 2013.6.10      アナスタシア伝説の真相? 【ロシア幽霊軍艦事件】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

芦ノ湖に突如として浮かび上がるロシアの軍艦。御手洗潔がその謎を解く。御手洗潔シリーズとして、またもや過去の出来事の調査となる。実在の人物であるアナスタシアをテーマとした作品なので、アナスタシアについて知識がある人はさらに楽しめるだろう。芦ノ湖に登場した軍艦が、アナスタシアとどういう関係があるのか。

自分はアナスタシアについての知識はないが、単純な歴史ミステリーとして楽しむことができた。作者の旺盛な想像力で、とんでもない結末となる。ロシアと日本の関係や、時代の問題など、歴史の勉強にもなる。相変わらず御手洗潔だけが、ずば抜けた推理力を持ち合わせている。ミステリーというより、ロシアの皇帝の血を引く女性の悲劇の物語として非常にすぐれている。

■ストーリー

箱根のホテルに飾られていた一枚の古い写真。そこには、芦ノ湖に浮かぶ帝政ロシアの軍艦が写っていた。その軍艦は嵐の夜に突如として現れ、軍人たちが降りると忽然と姿を消してしまったというのだ。山間の湖にどうやって軍艦が姿を現せるというのか。御手洗と石岡は、この不可解な謎に挑むことになり…。名探偵・御手洗潔の推理によって、歴史に隠された壮大なロマンと清冽なる感動が浮かび上がる。

■感想
アナスタシア伝説をそのまま作者の解釈で物語化したものだが、まず自分はアナスタシアについてまったく知らなかったので、新鮮な気持ちで読むことができた。アナスタシアのことを知っていれば、さらに楽しめるのは間違いない。アナスタシアがどのような人物で、歴史上では殺されたことになっているが、実は生きていたという伝説がある。

そんな摩訶不思議な題材を、ミステリーと融合させ、すばらしい物語に仕上げている。タイトルからは、アナスタシアを連想するのはまず無理だろう。作者の描きたいことはアナスタシアで、ロシア軍艦はオマケでしかない。

芦ノ湖に突如として登場したロシアの軍艦。ロシア軍艦の謎とアナスタシアがつながるとは普通は考えないだろう。ロシア軍艦の謎だけで物語を作り上げた場合は、ただ、一夜にして軍艦が現れ、消えた原因を探るというだけで終わるだろう。

アナスタシアを絡めることで物語に深みがで、歴史ミステリーとしての面白さが浮かび上がってくる。今回は、石岡はまったくといっていいほど活躍しない。御手洗が机上で推理を展開し、あとはそれをなぞる作業と、アナスタシアの真実が語られるという流れだ。

御手洗潔シリーズの中では、異色な作品かもしれない。複雑なトリックや、難解な事件を解決するというのではない。情報と知識を整理し、時代背景からなんらかの答えを導き出す。自分はアナスタシアだという主張とそれに対する御手洗の答えというのが、さすがにこじつけと感じさせない説得力がある。

現実の答えとして正しいかわからないが、ある程度の説得力がある答えなので、違和感はない。物語としての面白さを追究するのではなく、歴史ミステリーに独自の答えを出す、ということに燃える作者の心意気を感じてしまった。

オーソドックスなミステリーではないが、印象に残る作品だ。




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