リバース  


 2012.1.11  ある種の変身願望だ 【リバース】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

ネット上で心を通わせた相手が、実はお互いに性別を偽っていた。ネット上の恋愛を描いた話というのは、使い古されたネタなのかもしれないが、男女性別を入れ替えてというのはわりと新しい。ただ、そこにドラマとしてのインパクトがなければならない。本作では、お互いが相手を同姓と思いネット上で会話を続けていく中で、人間としての魅力に惹かれることになる。ネット上の世界とは別に現実で繰り広げられる様々な出来事が物語を盛り上げるはずが、どうにも秀紀のエピソードに違和感を持ってしまう。オタクな風貌にも関わらず、突如として女子大生や同僚からモテはじめるなど、都合の良い展開ばかりが目につく。全体的に重みが感じられず、軽い雰囲気だ。

■ストーリー

どうして、わたしたちってこんなふうに話があうのかな―。互いに性別を偽ったまま、千晶と秀紀は、ネット上で深く心を通わせるようになるが…。年齢や性別といった現実な枠を取り払ったところに生まれる関係を鮮やかに描き出す、全く新しい恋愛小説。

■感想
ネット上で男を演じる女の千晶と、ネット上で女を演じる男の秀紀。何が楽しくてと思ってしまうが、自分を偽り架空の人物を演じる楽しさというのはなんとなくわかる気がする。そんな二人が、リアルな世界でいろいろとありながら、お互い相談していくうちに、実際に会おうという話になる。ここまではわりと想像どおりで、右往左往するくだりも予想通りだ。ただ、その後の展開が意外な方向へと動いていく。バリバリのキャリアウーマンの千晶とさえないオタクな秀紀。二人の関係はネット上でしか成立しないものと思っていた。

それぞれの現実の描写はそれなりに面白い。仕事に生きる千晶が、だんだんとステップアップしていく姿は読んでいて楽しくなる。対して、残業続きで疲弊する秀紀であっても、なぜか突如として周りの女性からモテ始める。恋愛に自信がもてない男が、突然モテ始める理由はいっさい説明されず、ただ、困惑する秀紀ばかりが描かれている。このあたり、千晶との恋愛相談を行う上で必要なことなのかもしれないが、冴えない男がモテ始めるには、それなりの理由が必要に思えたが、本作ではそれらはいっさいない。

わりとストレートな物語だ。お互いの正体を知ってからどうなるのかという興味はあるが、それ以外はわりと想定どおりだ。ネット上でのつながりという、ゆるそうでしっかりと硬い結びつき。相手の顔が見えないだけに、なおさら頭の中で美化してしまうのだろう。変身願望がある人にとって、自分のことを何も知らない相手とのやりとりというのは、もしかしたら魅力的なことなのかもしれない。本作では男女を入れ替えるということで、ありきたりなネット恋愛を、刺激的なものへと変化させている。

全体的に軽い印象だが、ラストの流れは意外だ。




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