2012.3.8 ドキュメンタリー的迫力 【レスラー】 HOME
評価:3
■ヒトコト感想
猫パンチのイメージが強いミッキー・ロークが、まるで自身の状況を映像化したドキュメンタリーのような作品だ。元人気レスラーが落ちぶれ、アルバイトにあけくれる。過去に脚光をあびたはいいが、現在は落ちぶれた生活を続ける人など、掃いて捨てるほど存在するだろう。身の丈にあった細々とした生活をしていたとしても、過去の栄光や、自分がやるべきことにとらわれつつ、心の中はすさんでいく。ミッキーロークが演じると、さらにその雰囲気は増している。パターンとしては、わりとよくある話なのかもしれないが、ミッキーロークのすさまじさに圧倒されてしまう。本物のレスラーのような体つきに、カメラワークによる仕掛けがあるにせよ、激しいアクションシーンは思わず見入ってしまう。
■ストーリー
栄華を極めた全盛期を過ぎ去り、家族も、金も、名声をも失った元人気プロレスラー“ザ・ラム”ことランディ。今はどさ回りの興行とスーパーのアルバイトでしのぐ生活だ。ある日心臓発作を起こして医師から引退を勧告された彼は、今の自分には行く場所もなければ頼る人もいないことに気付く。新しい仕事に就き、疎遠だった娘との関係を修復し、なじみのストリッパーに心の拠り所を求めるランディ。しかしその全てにつまづいた時、彼は悟る、例え命を危険にさらすことになっても、自分はプロレスラー“ザ・ラム”としか生きることが出来ない男なのだと。。。
■感想
プロレスが事前に仕組まれたショウーだということに、いまさら文句を言う人はいないだろう。元人気プロレスラーであったランディが、自分の本当の居場所を探し、奔走する。元人気プロレスラーの栄光を捨て、手堅い仕事をするという選択肢もあったはずが、ランディは過去にしばられ細々と現役レスラーとしてプロレスを続けている。それが自分自身が選んだ道ということで後悔はないはずが、娘のことになると多少の後悔をにじませる。過去の栄光にすがりつくそぶりは、それほど見せてはいないが、心の中はプライドの塊なのだろう。
過去のスターが、今はスーパーで惣菜係りとなる。プライドを選ぶのか生活を選ぶのか。普通の人であれば、生活するためにどんな屈辱にも耐えながら、仕事を続けるだろう。ランディの突発的な思いというのは、痛いほど伝わってくる。現在のランディの生活が惨めであればあるほど、観衆は無責任な感覚として、レスラーとして復帰しろと思ってしまう。物語はそんな観衆の希望そのままの流れとなる。たとえ命に危険が迫ったとしても、ランディはプロレスを続けていくのだろう。最後はリング上で死にたい、なんてことを思っているのだろうか。
ミッキーロークのパンパンに張った筋肉と、それを痛めつける様は、すさまじいものがある。仲間と試合の段取りを決めながら、その通りに試合をすすめたとしても、やはり肉体を痛めつけるというのは見ていて衝撃的でしかない。猫パンチのイメージが強かったミッキーロークが、これほど熱い演技をするとは思わなかった。まるで自身の境遇をイメージしたようなランディの落ちぶれ方は、「これはドキュメンタリーか?」とすら思えてくる。それほど真に迫った迫力が画面から伝わってきた。
ミッキーロークを知らない世代でも、その迫力は伝わってくるだろう。
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