ラットマン  


 2011.1.4  何か怪しい仕掛けがある? 【ラットマン】

                      評価:3
■ヒトコト感想
作者の作品は、結末に思いもよらない仕掛けがあり、驚かされることがたびたびある。本作もそのパターンには違いないが、今までの作品と比較すると驚きは少ない。スタジオでの不可解な事件の真相がメインなのだが、その前に姫川の少年時代の出来事が大きな意味を持っている。何か怪しい仕掛けがあるぞと思わせる描写が多数あり、ひとつひとつの言葉に重みがある。それらがラストに大きな仕掛けへと繋がっていくのかと思っていたが、想像よりも仕掛けは小さかった。どうしても今までの作品と比較してしまう。物語として悪くはないが、真実がはっきりしたことで”騙された”とか”やられた”という気分はわいてこなかった。

■ストーリー

結成14年のアマチュアロックバンドのギタリスト・姫川亮は、ある日、練習中のスタジオで不可解な事件に遭遇する。次々に浮かび上がるバンドメンバーの隠された素顔。事件の真相が判明したとき、亮が秘めてきた過去の衝撃的記憶が呼び覚まされる。本当の仲間とは、家族とは、愛とは―。

■感想
”ラットマン”というキーワードに大きな意味があるのだろうと思っていた。題材としては面白く、思い込みの力を再認識させる作品なのは間違いない。物語のベースがアマチュアロックバンドということでそのあたりの専門用語や、事件に大きな影響を及ぼす器具の話など、詳しい人にとっては楽しめたことだろう。音楽関係に疎い自分にとっては、頭に情景を思い浮かべることはできるが、そのあたりにどういった面白さがあるのかを感じることができなかった。音楽に興味があればまた違っただろう。

姫川の衝撃的な記憶が大きな鍵となる。前半から中盤にかけては、いかにも何かありそうだという雰囲気がただよっている。印象的な言葉を呟く父親や、姫川にそっけない態度を示す母親など、それらにどういった意味があるのか、思わず深読みしてしまった。物語はバンドメンバーそれぞれの考え方が大きく影響している。スタジオで起こった出来事は事件か事故なのか。小難しいトリックではなく、人の心の扱い方をうまくトリックに絡めている。勘違いというか思い込みというか…。ただ、ミステリーとしての面白さというのは少ないかもしれない。

前半部分のなんてことないロックバンドメンバーのやりとりや、意味深な言葉が続く回想シーンなど、物語へのめり込む部分とさらりと流してしまう部分があるような気がした。特にロックバンドのメンバーについては特別な個性を感じることがなかったため、読んでいて誰が誰だかわからなくなる危険性があった。姫川の狭い人間関係であっても事件の謎を語る人々をはっきりと個別に認識することが難しい。もともとロックバンドの受け持つ楽器について興味がないのでそうなったかもしれない。バンドに興味があれば、それぞれのメンバーの個性を認識できたかもしれないが…。

今までの作者の作品レベルを期待すると、少しがっかりするかもしれない。




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