プロムナード  


 2011.12.6  素人時代の絵本は衝撃的 【プロムナード】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

作者の初エッセイ集。年代が近いせいか、非常に共感でき、また笑いのツボも近く、笑えるエッセイもある。本作の特徴としてエッセイだけでなく、十代のときに描いた絵本や戯曲までもおさめられていることだ。作家になるような人は、昔からそれなりに創作活動をしていたのだろう。戯曲はよくわからないが、絵本などはそれなりのインパクトがある。ハッピーエンドにならないのが、なんとなく今の作者に通じているような気がした。雰囲気的に伊坂幸太郎に近いイメージをもっていたが、作者の方がエッセイは面白い。ネタとしてしっかり仕込んでいるような印象と、オチをひねり出すパワーがある。中にはなんてことないエッセイもあるが、全体的にサラリと楽しめるエッセイ集だ。

■ストーリー

作家になるまでの道程から、昔好きだった女の子との話まで…。一篇一篇に驚きが詰まった、新感覚のエッセイ54篇に加え、17歳のときに初めて描いた絵本『緑色のうさぎの話』。19歳のときに初めて文字で綴った戯曲『誰かが出て行く』も特別に収録。

■感想
作者の作品だけを読むと、どんな人物かイメージするのは難しい。エッセイを読むとなんとなくだが、イメージできる。本作を読むと、昔から物書きになるという目標はあったが、それ以外は不真面目だったんだなぁという印象をもつ。特に、学生時代には金髪の長髪でピアスつきというのは、今の作者のイメージとはずいぶん違う。本作のエッセイのイメージともかけ離れてしまう。やはり、人というのは若い時にどうだったとしても、大人になればそれなりに変わるのだろう。作者の学生時代の友達が、今の作者を見たらどう思うのだろうか。

戯曲はさておき、作者が素人時代に描いた絵本は、なにげにインパクトがある。イジメがテーマなのかなんなのか。どことなくバッドエンドで、なんとなく突き放したような展開というのは、子どもに見せるには抵抗があるかもしれない。それでも、インパクトはある。絵もそれなりに味があり、絵本として成立するかは抜きにして、面白いと思った。こんな絵本を高校生の時に書くというのがすごい。というか、高校生がマジメに絵本を書こうとするあたり、普通じゃないのかもしれない。

作者の好きな映画作品や小説など、わりと自分と波長が合うということがわかった。同世代だから必然的にそうなるのかもしれないが、好きなポイントが近い。エッセイの笑いのツボも近いのだろう、読んでいて心地良い笑いがこみ上げてきた。それほど肩肘張って読むものではないので、楽に寝転がりながら、たまに「へへ」と笑うくらいがちょうどいい。できるだけ短い文章で真意を伝えようとするそのスタンスも好きだ。時間がないので文章が長くなってしまうというのは、意外なようでその通りなのかもしれない。

軽く楽しむにはもってこいの作品だ。




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