パブリック・エネミーズ


 2013.7.17     ねずみ小僧的ヒーロー 【パブリック・エネミーズ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
実在の人物を題材とした物語。ジョニーデップはこれでもかとかっこよい役を演じている。鮮やかに銀行強盗をやりとげ、たとえ捕まったとしても、鮮やかに脱獄する。デリンジャーは強者から金を奪い、弱者を助けるという、さながらねずみ小僧のような人物だ。そんなデリンジャーが偶然出会った女と恋をし、そして、その先には仲間が死に、自分に危機がせまろうとも女を追いかけ続ける。

デリンジャーの仲間たちが個性豊かで、どんな銃撃戦になろうとも生き残るたくましさが良い。そして、デリンジャーたちを追いかける捜査官が秀逸だ。デリンジャーたちを逮捕するためにはどんなことでもやる。冷たい表情の中に、確固たる信念がみなぎっている。熱い男たちの物語だ。

■ストーリー

1933年、アメリカ。大恐慌の暗澹たる時代の中、銀行強盗のジョン・デリンジャーは“黄金時代”を謳歌していた。利益を独り占めする銀行のような強者からは金を奪っても、世間一般の弱者からは一銭たりとも奪うことはしないという独特の美学を貫きとおす彼は、その紳士的な振るまいと圧倒的なカリスマ性によって、いつしか不況に苦しむアメリカ市民のヒーロー的存在となっていた。

そんなある日、彼はバーで神秘的な魅力に溢れた女性、ビリーと運命的に出会う。銀行強盗であることも隠さずに、誠実な心で接してくれる情熱的で一途なデリンジャーにビリーは次第に魅かれていく。

■感想
銀行強盗のデリンジャー。何度捕まろうとも、必ず脱獄する男。仲間の信頼も厚く、かっこよく、そして圧倒的なカリスマ姓をもつ。世間的にも有名人となり、顔が売れると、警察は目の敵のように追いまわす。本作のポイントは、デリンジャーたち銀行強盗対捜査官たちの戦いだ。

デリンジャーたちがあちこちにネットワークを張り巡らせ、隠れ家や武器を補充するつてもある。対して捜査官たちは、州ごとに個別に動き、協力する体制というのができていない。そんな状況がデリンジャーたちの黄金時代を作り上げている。

強烈なインパクトがあるのは、デリンジャーたちがどんなピンチに陥ろうとも、うまく警察の手を逃れる部分だ。激しい銃撃戦。そして、死んでいく仲間たち。この手の作品の宿命とも言えるのかもしれないが、印象深い仲間たちが、次々と脱落していくのは、見ていて心が痛くなる。

最後にはデリンジャーひとりが生き残り、ひっそりと暮らしていく。物語はここで終わるのではなく、捜査官がひたすらデリンジャーを追いかけることへと続く。すさまじいまでの執念が、最後にはデリンジャーを追い詰める。世間的にはヒーロー的扱いなだけに、最後は哀愁ただよう終わり方だ。

黄金時代を謳歌していたデリンジャーが、最後に落ちぶれていったのには理由がある。昔ながらの手法を続けることに限界があったのだろう。このあたり、新たな稼ぎ場所を見つけ、うまく立ち回る仲間たちに比べ、実直なまでに銀行強盗にこだわるデリンジャーというのが、時代に取り残された悪人のようで、悲しみを誘発している。

デリンジャーとその仲間たちも、心のどこかでこの生活がずっと続くとは思っていないのだろう。そのあたりの描写は微かに描かれている。わかっていながら抜け出せない辛さが漂っていた。

デリンジャーの黄金時代はまさに見ていて爽快だ。



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