アウトレイジ


 2012.11.6    ヤクザもサラリーマンだ 【アウトレイジ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
ヤクザの世界もサラリーマンと変わらない。北野映画というと、バイオレンス満載で、どこかシュールな物語をイメージしていたが、本作は今までになく一般受けさせようとしている。わかりやすさとバイオレンスの中に、哀愁のようなものが漂う。現実のヤクザの世界が、本作とまったく同じだとは思わないが、変な面白さがある。下っ端の組である大友組が、親である池元組や本家の山王会の言いなりになるのは、まるで親会社の方針に右往左往するグループ子会社の社長のようだ。サラリーマンの世界では、上司が無能なら苦労するのは下の者たちだ。要領の良い人間だけが登りつめることができる。ヤクザの世界では失敗が即、死に繋がる。なんとも恐ろしいが哀れみをもって見てしまう。

■ストーリー

関東一円を取り仕切る巨大暴力団組織・山王会組長の関内(北村総一朗)が若頭の加藤(三浦友和)に、直参である池元組の組長・池元(國村隼)のことで苦言を呈す。そして、加藤から直系ではない村瀬組を締め付けるよう命令された池元は、配下である大友組の組長・大友(ビートたけし)にその厄介な仕事を任せる。こうして、ヤクザ界の生き残りを賭けた壮絶な権力闘争が幕を開けた。

■感想
ヤクザもサラリーマンと同じだ。上に良いように使われ、苦労しながらも部下を大事にする大友。大友役をたけしがやるのはまさに適役だが、それよりもダメ上司である池元組の池元が良い味をだしている。なんでも適当にやりながら逃げ回る。本作のすべての元凶は、まさにこの池元と言っても過言ではない。池元が発端として始まった出来事が、山王会会長である関内にいいように利用されることになる。ヤクザの世界は、親子の絆は固いものと思っていたが、本作ではすべて口先三寸だ。

本作はキャストが豪華だ。ちょっとしたチンピラ役に有名俳優がでていたり。どれだけキャラ立ちしていたとしても、最後はあっさりと死んでしまう。恨みつらみや激しい権力争いがあるわけではない。ただ、ちょっとした行き違いから、事件が思わぬ方向へと動いていく。大友の悲しげな表情や、叫び声というのは、どうにもならない現状を嘆くようにも思えてきた。権力を持つ者と持たざる者。その違いがはっきりと出ている。象徴的なのは会長の関内が絢爛豪華な家に住み、札束が集まり続けるという場面だろう。

本作のキャストでヤクザ以外にキャラ立ちしているのは、間違いなくマルボウの男だ。大物ヤクザと取引をし、飄々と世間を渡り歩く。刑事というだけで、権力がある。皮肉なことに、どれだけ実力があり部下から慕われようとも、その権力は砂上の楼閣でしかない。ひとたび親が何か言いがかりをつければ、それだけで崩れ落ちる権力だ。すべての頂点と思われた関内であっても、磐石ではない。だましだまされの世界の悲しさだけが最後に残る。生き残るのは、いつの時代も要領の良い者だけだ。

北野映画にしては、非常に一般うけしやすそうな作品だ。



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