大人になるということ  


 2011.6.17  印象的なフレーズ集 【大人になるということ】

                      評価:3
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■ヒトコト感想
作者の今までの作品の中から印象的なフレーズを抜き出し、まとめた作品。そのため、作者のファンや作品を読んだことがない人には、あまり意味はないかもしれない。作者の作品には、突如として独特なフレーズがでてくるときがある。特に池袋ウエストゲートパークシリーズで顕著だ。物語の全体を象徴するようなフレーズだったり、すべてをひっくり返すような一言だったり。そのフレーズがあることで、物語が締まるというのがある。印象深いフレーズは、読むだけでその物語を思い出す。ただ、結局フレーズをまとめただけなので、物語を知らずフレーズだけ読んでも、良さはわからないだろう。作者のファンでなければ読む価値はないかもしれない。

■ストーリー

大人になること。正しさの規準を外側にではなく、自分自身の中心に据えること――。絶大な人気を誇る『池袋ウエストゲートパーク』シリーズをはじめとする小説の中から、心を揺さぶられる珠玉のフレーズを抜粋。「恋をし、胸を躍らせ、時に傷つくということ」「物事を見極めるということ」「人と繋がるということ」など、六つのテーマにまとめられた石田衣良・初の箴言集!

■感想
池袋ウエストゲートパークは、常識的な判断や大人の決めたルールよりも、その場その場で突発的にでてくるフレーズが良い。必ずしも正しくはないが、的を射ているフレーズだ。それを読んだ瞬間は、雷にうたれたような感覚になる。当たり前ではないが、そのフレーズに納得してしまう。物語を読んでいれば、間違いなく説得力抜群のフレーズになることだろう。それをフレーズだけ抜き出して読んだとして、どれほど楽しめるのか。物語を思い出すきっかけにはなるが、それだけで何かを感じられるほど安易なものではない。

基本的には、作者の作品を読んでいることが前提だ。物語の全体を思い出し、「そういえば、こんなことを言っていたなぁ」という程度の軽いフレーズもあれば、見た瞬間にその場面がフラッシュバックするほど強烈なフレーズもある。前後の文脈が重要なのはもちろんだが、抜き出してもそれなりのインパクトがあるものもある。自分の中では、愛や恋についての言葉よりも、社会や生活についてのフレーズの方がインパクトが強い。特に就職についての一言には、度肝を抜かれたものもある。

さらりと読め、深く考えなければ、ちょっとしたカレンダーに書かれた一言よりも、陳腐に感じるだろう。変にかっこつけていたり、若者風な雰囲気をだしているので、なおさらそう感じるかもしれない。表題にもあるように、どこか大人になりきれない大人に対する金言のような気もするが、作者の作品のトーンを考えるとそうなのかもしれない。人生についてうんぬんと偉そうなことではなく、その場で突発的に思いついた言葉なので、勢いはかなりある。

本作を読んでどう感じるかは、作者のファン度にかかってくるだろう。




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