おれに訊くんじゃない  


 2011.12.27  中二男子的目線 【おれに訊くんじゃない】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

作者のエッセイが辛口なのはわかっていた。あくまでも笑いをとるための辛口であり、悪意がない(と思う)。作者が作家としてデビューする前のライター時代に描いたエッセイなのだが、相変わらずすばらしい。何がすばらしいかというと、なんでもありなところだ。おそらく女性が読めば激怒しそうなことがあちこちに書いてある。それでいて、究極のくだらなさがある。あきあらかに中学生男子的な目線もあれば、やけに理論的に、男と女の行動の気持ち悪さを叫んだりもする。なんとなく感じていたが、はっきりとしなかったことを、作者が独自の言葉で述べてくれると、非常にすっきりとする。男が読めば間違いなく楽しめることだろう。

■ストーリー

男と女ってどうしてこんなに感じ方が違うんだろう。永遠に解ききれないこの不思議を鋭くウォッチング。ちょっぴり辛口、なのになぜか納得の、おもしろ本音エッセイ。

■感想
まさしく中学生男子が教室でくだらないことをグダグダ話す感覚で読める作品だ。作者の知り合いで”OL”と言う言葉を、エロビデオからの知識でしか知らず、エッチ方面の言葉だと思っていたくだりや、街中でいちゃつくカップルを見て思うことなど、よく考えれば非常にくだらない。ただ、そのくだらなさが面白い。偏った男目線で、女性の意見はいっさい取り入れていないというエッセイだが、それが男らしくて良い。変に女性に媚びていないので、いさぎよさが作品からにじみ出ている。女性からの否定的意見も望むところなのだろう。

男女のことについては、作者お得意の野球観戦についても書かれている。登場する選手がいかにも昔を感じさせるのだが、古き良きプロ野球を思い出し逆によかった。どのような経緯でこのエッセイが書かれたのかわからないが、連載されていたのはどうやら女性誌らしい。女性誌連載のエッセイで、「申し訳ないが、女性誌は読まない」なんてことを書けるのは作者だけだろう。売れっ子作家になる前の、ただのフリーライターが、自分の好きな野球のことを書き、女性誌の文句を女性誌に書く。なんという反骨芯だ。

今は絶版になった本作。小説家として直木賞を獲得するほど売れっ子になったからには、もしかしたらそのうち復販されるのかもしれない。小説執筆に忙しく、この手のエッセイはあまり書けないのかもしれないが、作者のエッセイのファンとしては、気長に待つしかない。小説作品の原点となるべき趣味の話しや、プライベートな部分など、小説作品ではうかがい知れない作者の裏の顔が見えるようなエッセイは貴重だ。小説作品ばかり読んでいると、作者の真の魅力はわからないだろう。

男性にはおすすめするが、女性には間違いなくすすめられない作品だ。




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