思いわずらうことなく愉しく生きよ  


 2012.6.25   ドラマチックな3姉妹の生活 【思いわずらうことなく愉しく生きよ】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

性格の異なる3姉妹が主役の物語。夫からDVを受ける長女の麻子。外資系企業に勤務する治子。変わり者の育子。この三人の痛々しいまでの生活が、赤裸々に描かれている。それぞれが特殊な状況にあり、さらには両親が離婚し、家族全員がそろうことはほとんどない。ドラマになりそうなほど個性的な3姉妹で、特に治子の虚勢をはる性格というのは興味深い。どのタイプもそれぞれ難ありだが、麻子のエピソードがやはり一番心に残ってる。安易にDVを克服するなんてオチにはならず、なんとも作者らしい最後がすばらしい。厳格な父親というわけではないが、姉妹は父親に従い、タイトルのような教えを受ける。最後に体が浮き上がるような軽やかな気分になれる読後感はすばらしい。

■ストーリー

犬山家の三姉妹、長女の麻子は結婚七年目。DVをめぐり複雑な夫婦関係にある。次女・治子は、仕事にも恋にも意志を貫く外資系企業のキャリア。余計な幻想を抱かない三女の育子は、友情と肉体が他者との接点。三人三様問題を抱えているものの、ともに育った家での時間と記憶は、彼女たちをのびやかにする―不穏な現実の底に湧きでるすこやかさの泉。

■感想
特殊な3姉妹の物語。3女の育子が、一番フラフラとして不安定な精神状態かと思いきや、一番まともかもしれない。その辺のおじさんに処女を捧げるという、貞操観念の希薄さと、誰の心にも夢遠慮に入り込む感覚というのは、非常にやっかいだ。にもかかわらず、誰からも愛されるのは、末っ子の力なのか、それとも作者のキャラクタ造詣のすばらしさなのか。頭に思い浮かんだのは、独特なファッションを好む不思議ちゃんだ。3姉妹の中では、最初は一番インパクトが強いが、後半になると、そのまともさから、印象は薄くなるかもしれない。

次女の治子は、その高飛車な態度から、男としては最も付き合いづらい相手だという印象だ。治子が恋人である熊木に対して投げつけた言葉は、世間の普通の男であれば、当たり前のように怒り狂うだろう。作者はあえてこんなキャラクターにしたのだろう。上司や同僚と深い考えなしに寝るが、恋人は大切に思う。治子の理論というのは、やり手の外資系勤務男子が、恋人に対してする言い訳のようにも思えた。というか、それ以上に強引な理論だ。治子のような考え方の女性がどの程度いるかわからないが、かなり強烈だ。

3姉妹の個性の中で物語に刺激を与えているのは、麻子が夫からDVを受けているという部分だ。3女と次女が協力しても、麻子を救いだすことができない。DV夫婦を解決するのは、とてつもなく困難なことなのだと、本作を読めばはっきりとわかる。「きらきらひかる」のようなどこか破滅へと近づく雰囲気がありつつも、最後には父親が昔と同じように3姉妹に接することで、すべてが良い方向へ向かっている。タイトルにある言葉がすべてを物語るように、ラストには明るい未来しか見えてこない。

男が読んでも十分に楽しめる、3姉妹のドラマチックな生活だ。




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