踊る手なが猿  


 2013.1.15    新宿地下街になじみがあれば 【踊る手なが猿】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

奇妙な短編集。吉敷が登場するガチガチのミステリーもあれば、江戸時代の話まである。何かテーマがあり、それにそくした短編が集められているわけではないので、なんなく雑多な感じがした。表題作でもある「踊る手なが猿」は、どのようなタイプの作品かわからない状態で読み始めたので、最初は奇妙な恐ろしさがあった。子殺しをする猿の話がエピソードとして登場し、なんとなく超常現象的な何かを連想してしまった。が、蓋を開けてみると、定番ミステリー的な流れだった。新宿の地下街の地図が手なが猿のように見えるというのは、多少こじつけのように感じられたが、驚きはある。新宿地下街に馴染みのある人であれば、それなりに楽しめるのだろう。

■ストーリー

新宿西口地下街にあるケーキ屋のガラスケースの上にすわる猿の人形。向かいの喫茶店で働く純子は、この猿に結ばれている赤いリボンが、時によって位置を移動するのが気掛かりだった。(「踊る手なが猿」)。都立高の敷地から江戸時代の墓地が?その中の樽形の棺に男女二体の人骨と、密封された小壷が入っていた。(「暗闇団子」)。サスペンス&トリック傑作集。

■感想
「踊る手なが猿」は、想像力を働かせれば、そう見えなくもない、という多少の強引感をおぼえてしまう。ガラスケースの上に座る猿の人形。人形に結ばれる赤いリボンに何か意味ありげな恐ろしさがある。新宿の地下街の地図が、手なが猿のように見えるという錯覚をうまく使い、たくみなミステリーを作り上げている。地下街の喫茶店に勤務する女が主人公なのだが、地下街が日の当たらない陰鬱な場所というイメージを植え付け、そこから突然、店の店長が失踪するという奇妙な恐ろしさがある。猿の人形が鍵となる恐ろしげなミステリーを思わず想像してしまう流れだ。

「Y字路」は、吉敷が登場し、いつもの吉敷シリーズ的な流れとなる。部屋に帰ると見知らぬ男が死んでいた。結婚を間近にひかえた女は、余計な醜聞をさけるために、婚約者にそそのかされ死体を別の場所で死んだように偽装しようとするのだが…。女は男と結婚したいがために、男の言いなりとなり偽装処置をする。このパターンは作者の作品でいつくか読んだことがある。中盤あたりでうっすらとオチがわかるのだが、なぜそんなことをしようとしたのかのタネ明かしが楽しみで仕方がない。正直に警察に連絡していれば、自分には何の非もないにも関わらず…。女の心理状態を見事に誘導した作品だろう。

「暗闇団子」は、作者の作品としてはめずらしく江戸時代の物語となっている。都立高の敷地から密封された小坪が出土した。その中には高価な櫛が入っていた…。江戸時代。そこで何が起こったのか。この手の作品を作者が描くことに驚いた。花魁と庶民がおりなす江戸時代の悲恋の物語といえるのかもしれないが、違和感をもった。時代考証がしっかりとされており、江戸時代の風習や出来事が語られ興味深いことは間違いない。それでも、突然降ってわいたような物語だという印象は拭い去れなかった。

雑多というかごった煮というか、種類がまったく違う短編が収録されている。




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