猫を数えて  


 2013.4.6     オーソドックスな男女の恋愛 【猫を数えて】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

男女間の恋愛を描いた短編集。男も女も何か強烈なインパクトのある恋愛ではない。携帯電話のない時代に描かれた作品だけに、男女の付き合いに対しても正統派だ。男女間の付き合いとなれば、不倫や浮気の話は当然でてくるのだが、それでもオーソドックスだ。

古き良き時代の考え方。男が女にごちそうするのは当たり前。女は30前に結婚するのが当たり前。SNSで出会いを探すなんてのがない時代なので、出会い方もごく普通だ。男として複数の女性と付き合う場合の心構えや、女としてどうやって男を見る目をやしなうのか。芸術家同士のカップルなんてのまで登場し、変化を与えているようだが、根本は正統派だ。

■ストーリー

「独り者学校」の必須課目は「同音意義語」に「公平感覚」、「ソプラノと油絵」ならびに「恋の確率」。「ドメスティックな女」が「石とダイヤモンド」の「薄い関係」に「景子の家」で「猫を数えて」いたら気がついた……。

■感想
「公平感覚」は、女は公平を好まないという当たり前のことをあえて物語にしている。仕事やプライベートまでなんでも公平な男がいた。付き合う女にも公平な態度でいたのだが…。女は男にひいきされたい。それも自分だけという特権意識がほしい。

まぁ、ごく当たり前のことだが、それを物語として順をおって説明しているのが面白い。男はなんにでも公平に接することで評価されてきた。公平は美徳とさえ考えてきた。が、女に対しては違うと初めて理解したのだろう。

「恋の確率」は、作者の作品ではよく登場するパターンだ。男は好きでもない女に言いよられ、好きな女には振られてしまう。男と女はそううまくいくものではないらしい。その理由は、男と女二つの性別の組み合わせでうまくいくパターンはひとつしかないと力説している。

必ずしもそうとは限らないが、確率で示されると、そうなのかと納得してしまう。世間にありふれた別れ話を、さも大発見のように語られると、自然と貴重な理論を知った気になってしまう。

「石とダイヤモンド」は、妻帯者には耳が痛い話かもしれない。男は、浮気した妻が戻ってきたいと言ったのであっさりと受け入れたのだが…。石とダイヤモンドを、元々は同じものと見立て、石は磨けばダイヤモンドになるというのを妻に例えている。

他人から見れば、自分の妻も魅力的に見える。体の関係を結ぶのに一番興奮するのは、人妻で次は妾で…、最後が自分の妻らしい。と考えると、一番と最後はまったく同じモノのはずだが、見る人が見るのと、磨けば異なるというのを描いている。

男女間の恋愛としてのオーソドックスな部分の面白さがある。




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