奈緒子


 2011.3.29  走りこんでいるのはわかった 【奈緒子】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
かなり前に読んだ原作マンガはそれなりに感動した。ただ、長編マンガを2時間弱にまとめるのはかなり難しいと思ったが、予想通りだった。物語は陸上部の駅伝メンバーが紆余曲折ありながら駅伝に勝つという、わりとシンプルな構成だ。そこに、奈緒子という遺物が入り込むのだが、ほとんど影響はない。奈緒子の目から見た駅伝に燃える男たちの姿が描かれているだけにすぎない。基本的に原作に忠実なのだが、やはりどうしても駅伝メンバーの個々のキャラクター付けが弱く感じてしまう。メンバー一人ひとりが思うところがありながら、必死に走りたすきをつなぐというのが感動ポイントなのだが、ほとんど感動は押し寄せてこなかった。ただ、必死に走る姿は心を打たれるものがある。

■ストーリー

長崎県波切島。喘息の療養中に両親に連れられて船釣りに出た小学生の奈緒子は、誤って海に落ちてしまう。そんな彼女を雄介の父親は助け命を落とした。それから数年後、雄介は“日本海の疾風(かぜ)”と呼ばれる天才ランナーに育ち、奈緒子はそんな彼と偶然再会する。

■感想
原作マンガでは、ある意味ものすごく定番的な流れではあった。駅伝メンバー同士の軋轢あり、一人だけずば抜けた走力を持つ雄介をねたむ者あり。その中で最後は協力し駅伝を走るというのが感動ポイントだった。個性的なメンバーがたすきをつなぐために必死に、ぶっ倒れそうになりながら走り続ける。マンガ的ではあるが感動した。それを本作は映画で実現しようとしている。映画の題材としては作りやすいように感じられたが、なぜかあまり感動はできなかった。個々の演技は悪くないのだが、駅伝を走るメンバーのバックグラウンドがあまり見えてこないことが原因だろうか。

マンガではメンバーそれぞれの駅伝に対する思いが丁寧に描かれていた。本作では時間の関係もあるのだろうが、雄介とコーチ以外にはオマケ程度にしか描かれていない。そんな状態で駅伝がスタートし、補欠だったはずのメンバーが力走するなど、説得力があまり感じられなかった。マンガでは個々のメンバーが走っている間はそのメンバーが主役だったが、本作ではあくまでたすきをつなぐだけ。メインはコーチと雄介と奈緒子の三人だけだ。そのため、随分と駅伝自体が軽い感じになっているような気がした。

俳優たちの走りに対しての強い思いというのは感じられた。足の筋肉を見ても、それなりに走りこんできたのだなぁというのはよくわかる。死にそうなほど辛い駅伝では、感動を伝えやすいように思えたが、雄介の突然スパートが何度も続いたりすると、マンガでは感じなかったわざとらしさというのが常につきまとってしまった。青春モノとして見れば、山あり谷あり、そして逃れようのない運命など、見るべきポイントはある。しかし、原作マンガを読んでいた身としては、もっと違う、駅伝メインの描き方もあったのではないかと思ってしまった。

悪くはないが、原作ファンは納得しないかもしれない。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp