御手洗パロディ・サイト事件 上  


 2013.9.24     これは成立するのか 【御手洗パロディ・サイト事件 上】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

ネット上にあふれているパロディ小説をそのまま作品化したもの。まさか、そっくりそのまま載せているとは思わなかった。それらパロディ小説を読み、石岡や御手洗が何らかの推理を展開するのだろう。正直、こんな作品だとは想像もしていなかったので、衝撃は大きい。無数にあるネット上のパロディ小説から、出来の良いものを選んだのだろうが、やはり、何かが違う。

パロディ前提で書かれているからなのだろうか。それなりにうまいと思う作品もあるが、どうしても違和感はぬぐい去れない。この作品で作者は印税をもらえたのだろうか。パロディ小説の作者たちは、自分の作品が本家に掲載されたということで、満足なのだろうか。まさかこのパターンとは思わなかった。

■ストーリー

司法試験に失敗した女子大生小幡が謎の失踪を遂げる。小幡の友人犬坊里美は石岡に助けを求める。小幡の部屋のフロッピーディスクから、インターネットで展開された御手洗潔の22編のパスティーシュ・ノベルが見つかった。

小幡の失踪の背景にパスティーシュ・ノベルがあると判断した石岡は、里美と共に懸命にパスティーシュ・ノベルの解読にあたる。「レオナがエジプトで拾った青い指輪」「校長室の絵から抜け出した少女」「鉄壁のアリバイを持つ不倫殺人」etc.のピースが絡み合い、謎はますます謎を呼んで。1行1字たりとも気を抜けない新感覚ミステリー。

■感想
タイトルどおり、ネット上にあふれる御手洗潔のパロディ小説を扱った物語。ネット上の小説がそのまま作中に登場し、その中のひとつに殺人事件のヒントが隠されているという流れ。作者は冒頭と、最後に少しだけ会話シーンを描き、物語として成立させている。

ネット上のパロディ小説をそのまま物語として成立させるなど、普通は考えないだろう。いわば素人が作り出した作品を、プロが利用としているということだ。確かにネット上にはすぐれた作品もあるのだろうが、それをそのまま、作品として掲載することについて、作者は何の疑問ももたなかったのだろうか。

恐らく、かなり賛否両論あっただろう。いくらプロ顔負けの作品があるからといって、それをそのまま扱うことに問題はないのだろうか。「レオナがエジプトで拾った青い指輪」などは、確かに幻想的でプロ顔負けの描写がすばらしい。が、しょせんはキャラクターが確立されているからこそ、表現できる作品なのだろう。

オリジナルで同じような雰囲気をだそうとすれば、キャラクター描写を最初からやりなおさなければならないだろう。自分の作品をパロディ化されることに、良い思いをしない作者もいる中で、本作の作者は寛大な心で受け入れているようだ。

パロディ小説の中には英語の小説もある。日本語の小説ならばわかるが、なぜあえて英語のパロディ小説を載せたのか。まったく意味が分からない。これが事件の謎解きに重要な意味を持つならば仕方がない。下巻を読むことで、それらの疑問が解決されるのだろう。

パロディ小説なだけに、どこかで読んだことのある小説や、他の有名作家に大きく影響を受けたと思わしき作品まである。それらを並べられても、なんだか微妙な思いしかない。

このパターンは、画期的ではあるが、商業的に正しいのだろうか。




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